「発酵で楽しい社会を!」をミッションに、2009年に発酵技術で循環型社会を構築していくことを目指して設立されたファーメンステーション(FERMENSTATION)。岩手県奥州市にある使用されていない余剰水田を活用し、そこで作られたオーガニック米から自社の工場でオーガニック認証を取得したエタノールを作り、サステナブル原料として提供している。昨年12月にアイスタイルが主催した「ジャパン ビューティテック アワード 2019(JAPAN BEAUTYTECH AWARDS 2019)」で、“未利用資源×発酵でつくるサステナブル化粧品原料”として評価され特別賞を受賞し、国際連合工業開発機関(UNIDO)からも「開発途上国・新興国の産業開発に資する優れたサステナブル技術」として認定されるなど、今注目を集めている企業だ。
ファーメンステーションの特徴は、ごみを出さない循環型ビジネスモデルにある。米を発酵させてオーガニックエタノールを作るときに出た残り粕(米もろみ粕)にはセラミドが多く含まれており、それを石けんやエキス化して化粧品の原料としたり、ニワトリや牛の餌にしている。またそのニワトリや牛の糞を畑の肥料として活用するなど、一切の資源を無駄にしない仕組みだ。原料となる米はJAS有機認証を取得し、そこから作られたエタノールもUSDA(アメリカ合衆国農務省)やエコサートコスモスのオーガニック認証を取得するなど、しっかりとしたエビデンスを持たせている。また米以外にも、果物カス(リンゴ、バナナなど)、茶カスなど多様な素材からエタノールを製造することができるのも特徴だ。
もともと原料の提供からスタートし、それを使用して自社製品の開発・販売を行ってきた。そしてその事例をもとに最近はOEM・ODM事業、大手企業向けに未利用資源を活用したソリューション提供、国内外の人に向けたサステナツアーを行うなど、ビジネスの幅を広げている。「昨年はJR東日本と組んで、リンゴシードルの搾り粕(未利用資源)を活用したアロマ製品の製造、発酵物の飼料への活用などさまざまな取り組みを実施した。原料から製品の製造まで一貫して手掛ける会社は国内には本当に少なく、大手企業が持っている未利用資源を活用できるのも当社の強み。サステナビリティへの意識が高まる中で、何から始めたらいいか分からないという企業からの相談も増えている」とファーメンステーションの酒井里奈代表は語る。
一方で「ただサステナブル製品なだけでは売れない、機能的にも満足度が高くなければいけない」とも考えている。「エタノールというと刺激の強さやケミカルな感じだからといって敬遠する人もいるが、それは石油由来のエタノールの印象。もともとエタノールの成分特徴としては、滅菌や防腐作用がある上に水にも油にも溶ける優秀な原料。弊社で製造しているオーガニックエタノールは刺激を感じにくく、臭いも他に比べて抑えられている。そのため化粧品にも使いやすくなっているし、香水やヘアケアなどにも使用できる。国内で原料からオーガニックエタノールを作っていて、その工程をトレースできる企業はほとんどなく、完全なサステナブル原料といえるのは弊社のものくらいだと思う」。
10年以上サステナブルへの意識を持って活動してきた酒井代表は今後について、「昨年から急速にサステナブルがトレンドとなり、弊社への問い合わせも増えている。これまで取り組んできたことがようやく評価されるようになってきてうれしい。ただ、ブームで終わらないようにしっかりとビジネスとして成長させていきたい。今後は海外への原料提供など、サステナブル原料のグローバルカンパニーを目指したい」と意欲を見せる。