ファッション

「パリ国際ランジェリー展」でもサステナやフェムテック旋風

 1月18〜20日の3日間、フランス・パリのポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開催された下着と水着の見本市「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」の内容と新たな流れを紹介する。

 同展では、世界中の出展ブランドの中から、今の下着市場を象徴するブランドに「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」が贈られており、今年はランジェリー、ラウンジウェア、水着を展開する米国マイアミ発ブランド「エバージェイ(EBERJEY)」が受賞した。授賞の理由として、1996年の設立時から一貫して女性が快適に過ごせる製品を作り続けていることや、米国の非営利団体「ワン・ツリー・プランテッド(ONE TREE PLANTED)と提携して売り上げの一部を森林再生に寄付していることなどが挙げられた。新製品にはオーガニックコットンやリサイクルポリエステル、リサイクルレースが多く使われており、時代を象徴するブランドと言える。

リアルサイズモデルの起用は定着、生理用ショーツにも期待

 同展では13のエシカルブランドを集めたエリア「オーガニック(O.R.G.A.N.I.C.)」が新設された。このエリアで紹介されているのは「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GLOBAL ORGANIC TEXTILE STANDARD以下、GOTS)」や「エコテックス・スタンダード100(EKO-TEX STANDARD100以下、エコテックス)」の認証を取得し、フランスで製造されているブランド。「エコテックス」の認証がサステナブルなブランドであることの基準であるという考え方が広がっているようで、パリの百貨店ギャラリーラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)では、この認証を取得しているトリンプ・インターナショナル(TRIUMPH INTERNATIONAL)の「スロギー(SLOGGI)」や、日本ではワコールが輸入販売している「ハンロ(HANRO)」などが同認証を取得しているというPOPが掲示されていた。 

 また、2018年ごろからいわれている“ボディー・ポジティブ”という言葉はすっかり定着したようだ。ファッションショーに登場するモデルの肌の色や体形、年齢の多様性に配慮されているだけでなく、多くのブランドがリアルサイズのモデルをイメージビジュアルに起用するようになっている。もはや痩身のモデルがプッシュアップブラを着けて谷間を強調する姿は、遠い過去のものだ。

 また、フェムテック市場の広がりは下着業界にも及び、ヨーロッパではなじみのない生理用ショーツが注目された。経血を吸収するシートを内蔵している「シンクス(THINX)」のショーツが米国を中心に定着しつつあることから、同様の機能を持つ生理用ショーツとコーディネートできるブラジャーなどが「ピリオド・ランジェリー(PERIOD LINGERIE)」として、新たなカテゴリーになりつつある。

墨絵画家とコラボを発表し独創性を追求した「オーバドゥ」

 サステブルやボディー・ポジティブの流れが加速するものの、デザイン的には数年前のブラレットブームのように新しいスタイルやトレンドカラーがないのが現状だ。その中で、下着の美しさを表現するレースは、絵画を写したかのような凝った刺しゅうや歴史的建造物を精巧に表現したモチーフなど、より独創性を増している。中でも『オーバドゥ(AUBADE)』は中国人水墨画アーティストの ホン・ワイ(Hong Wai)とのコラボレーションを発表し話題となった。ワイはまだ男性中心の伝統美術の世界で、17歳で初個展を開きグローバルに活躍している。伝統的な手法を用いて官能的なランジェリーやハイヒールを描くホン・ワイの作品は“アートとモードの融合”として『オーバドゥ』の目に留まり、今回のコラボが実現した。彼女の描いた柄がレースで忠実に表現されたデザインになっている。

 消費者のマインドは確実に変化している。取ってつけたようなサステナビリティの発信や展開サイズを少し増やしただけのボディー・ポジティブは消費者に響くとは思えない。歴史あるヨーロッパブランドの代表やデザイナーが声をそろえて「長く愛してもらえる物を作り続けることが、一番のサステナビリティだ」という言葉が印象に残った。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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