※この記事は2019年12月4日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
エディ「セリーヌ」のワードローブ計画
パリコレ後、表題の件を書こうと思いつつなかなか文字化していないのは、いわゆる“今季のパリの傾向”といった話とは違うからです。だけどエディ・スリマン(Hedi Slimane)による「セリーヌ(CELINE)」について思うことを誰かと共有したい(笑)、のでこちら書かせていただきます。
エディ・スリマンはトレンド・セッターと評されることが多く、実際2シーズン目の「セリーヌ」のウィメンズで打ち出したキュロットは大ヒットしています。ショーを通じたグルーヴ感はまさにトレンドセッターと言われるに相応しいものがあります。
ですが展示会から受ける印象はちょっと違い、もっとMD的です。エディからの提案通りに一アイテムずつをそろえれば数年後には“今日着る服に迷わない“完璧なワードローブが完成する”と思われる、計算されたアイテム構成力なのです。“パリジェンヌはこの基本アイテムを着まわしている!”と言った趣旨の着こなし指南本が定期的に書店を賑わしますが、今のエディの「セリーヌ」はまさにソレです。
2020年春夏のウィメンズのラインアップを見てみましょう。
ボトム:デニム、プリーツキュロット(スカートに見えるから便利)
ブラウス&シャツ:丸襟ブラウス、クレリックシャツ、ボウタイブラウス、フォークロア調ブラウス
アウター:金ボタン紺ブレザー、ノーカラージャケット、ライダース、ナポレオンジャケット、Gジャン、サファリジャケット、トレンチコート、タキシード
ワンピース:ベルトマークするプリントブラウス、フォークロア調ワンピース
靴:ウエスタン、ロングブーツ、ローカットスニーカー、ローファー、ポインテッドフラット、クロッグ、ハイヒール
こう書くとたくさんあるようですが、いわゆるスタンダードアイテムが選び抜かれています。そしてこれらを巧みに組み合わせて生まれるのは、「スクールガール」「艷っぽい大人」「フォークロア」の3つの女性像です。これって女性にとっては、一生全部持っていたい3つの顔ですよね。時に少女であり、時にセクシーな大人であり、時に自由人でありたいですから。日中は歩きやすいローヒールだけど、ここぞという夜のシーンではハイヒールがサッと出てくる感じです。
高価だから、毎シーズン一通りそろえるのは難しい。ショーやキャンペーンを通じてその世界観に惹かれたら一アイテムずつ、少しずつそろえていつかワードローブを完成させたい。そんな欲求を掻き立てられるのが今の「セリーヌ」です。そしてそれは、サステナビリティが重んじられる今の時代に合っている。だからエディによる「セリーヌ」は息の長いブランドになりそうです。
書いてみて思うのは、エディ談義ってやっぱり楽しい(笑)。定期的に誰かと語り合いたいです。
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