婦人服の製造販売を行うレリアン(LELIAN)は2月19日、公正取引委員会(以下、公取委)に約23億円の下請法違反を認定され勧告を受けた件について記者会見を開き、下請事業者との取引実態について説明した。同社が14日に公取委から勧告を受けた事案を複数のメディアが「下請けいじめ」と報道したことでブランドイメージが毀損されることを懸念し、17日には下請事業者10社が「下請けいじめはなかった」と声明文を発表。レリアンもそれに続いた形だ。
下請法を適用するためには、親事業者が商品を企画して上代や素材などの仕様を決め、下請事業者が仕様書に基づき製造する、いわゆる「製造委託」である必要があり、レリアンと下請事業者との取引実態がこの「製造委託」に該当するかどうかで公取委とは議論になったという。レリアンの小谷建夫・社長は、「商品の企画や値付けは下請事業者が行い、レリアンは店頭データに基づいた情報などを助言している。それに基づいて下請事業者が商品の仕様を確定させて生産し、レリアンが店頭で販売している。これは『販売委託』に当たると考えていた」と説明する。
これに対して公取委は、同社が「レリアン」というブランド名の使用を下請事業者にみとめている点などを理由に「製造委託」と認定し、同社に返品の禁止や返金を勧告した。レリアンは下請事業者から商品を買い取る際に、返品や将来的な値引きを見越して本来の買取価格から約25%高い価格で取引していたため、下請事業者に公取委が認定した約23億円の損害は発生していなかったと説明するが、公取委の勧告を受けて「勧告を真摯に受け止めて従う。キャッシュフローを見ながら返金を完了していきたい」と説明した。また、下請事業者と取引を続けてきた40年間、取引基本契約書を交わさずに、個々の取引時に発注書を交付していた実態についても公取委が「製造委託」と認定した理由だったとし、「取引基本契約を結んでいなかったのは認識が甘かった」と振り返った。
また、公取委の勧告を受けて同社はEラーニングを使用して全社員にコンプライアンス研修を実施。「取引形態もすでに変更した」と説明する。今後はいわゆる「製造委託」の取引形態に移行し、返品や値引きの対応を一切行わないという。このため生産量が落ちることになり、下請事業者の一つであるジャパンスコープの黒川洋・最高経営責任者兼会長は、「2割は減る想定だ」と話す。「これによってわれわれの下請事業者の仕事量も減るため、その影響を懸念している」と話す。
レリアンと下請事業者の双方が良好な関係にあったにもかかわらず公取委の調査が入った理由について小谷レリアン社長は、「正確には分からない。公取委がランダムに調査に入ることもあるため、必ずしも申告に基づいた調査とは限らない」と回答した。