※この記事は2019年12月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
残念な接客トークについて
店頭スタッフからかかる最初の一言で私が思う、“残念”ランキング第一位は「試着できますよ」です。心中「当たり前だよ〜」とツッコんで、中途半端な笑顔でコミュニケーションを終了させてしまいます。意地悪でしょうか。
この一言はいわば「ハロー」みたいなもので、会話の入り口であることは頭では分かってはいます。が、「試着できますよ」に対して戻せるリアクションは、「はい、お願いします」or「いいえ、結構です」とYES/NOの2択になりがち。少なくとも「試着してみませんか?」と背中を押してくれると気分が全然違うのに、と思います。
その次に残念な一言は、「何か(を)お探しですか?」です。これを聞くと頭の中に即、井上陽水が流れます(意味が分からない方はぜひ「夢の中へ」と検索を)。完全に買い物態度をこじらせていますよね、私(笑)。公私混同で洋服屋さんを見て歩くことが多いからこうなります。
でも思うのです。店に訪れる時のお客さんの多くは「何かいいものないかな」という心理のはず。「カーキ色で裾が少しフレアになっているウールのパンツを探しているんです」なんて、自分が欲しい服をピンポイントで求めて店を訪れることは少ないですよね。
今日これを書いているのは、それいいね、と思う話しかけられ方を先日したから。それは「どんな服を着たい気分ですか?」でした。その時は数日後にセミナー登壇を控え、「ある程度ちゃんとして見えるけど、自分らしい服、しかも気分転換に普段とちょっと違うスタイル」を探していました。セミナーだからといってジャケットがマストではありませんから、コーディネート力が問われる訳です。だから「どんな服を着たい気分ですか?」に対して、「ある程度ちゃんと〜」とそのまま返しました。
そこから 販売員さんによるスタイリング提案が始まったのですが、楽しかった。最終的にはパンツと厚地のカーディガンのワントーンコーディネートに着地したのですが、そこにたどり着くまでの、あーでもない、こーでもない、が楽しかったです。ものの15分ですがお店の方は、私の嗜好やライフスタイルをかなり理解してくれたと思います。
今は「何を着るか」以上に「どう着るか」が問われる時代。だから販売スタッフにはスタイリストとしての腕を期待しちゃいます。欲を言えばこちらがまだ知らぬ自分のポテンシャルを引き出して欲しい(笑)。自分では想像もしていなかった結果に着地する、そんな買い物こそ記憶に残るのではないでしょうか?店頭に足を踏み入れる多くの客にとって、「探しものは見つけにくいもの」なんだと思います。
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