ファッション

20年春夏は「アンブッシュ」や空山基、少女漫画誌「りぼん」ともコラボ 「UT」仕掛け人が語る「Tシャツから始まるコミュニケーション」

 ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」は、2020年春夏商品を一同に集めたプレゼンテーションを国内外のプレス向けに開催した。今季の「UT」は、「アンブッシュ(AMBUSH)」のYOONが手掛ける「DISNEY LOVE MINNIE MOUSE COLLECTION by AMBUSH」や、渋谷のアートギャラリー「ナンヅカ」に所属する田名網敬一や空山基といったアーティストと組んだ「NEO-MIYAGE」、創刊65周年の少女漫画誌「りぼん」との協業などが既に話題となっている。また、コラボレーション相手のデザイナーやアーティストを掘り下げた「UT2020 magazine」を作成し、2月28日から全国の「ユニクロ(UNIQLO)」で無料配布するなど、これまで以上に力が入っている。07年の立ち上げ時から「UT」事業をけん引してきた松沼礼UT事業部長に、改めて「UT」の狙いを聞いた。

――近年は「ユニクロ」の展示会の中で「UT」も発表していた。「UT」だけでプレゼンテーションを行うのは数年振りだ。単独プレゼンの開催意図は?

松沼礼UT事業部長(以下、松沼):東京五輪も開催予定で、今年は日本が世界中から注目を集める年。「UT」としても、これから公開するコラボレーションなども含め、多数のコンテンツを仕込んでいる。「ユニクロ」が掲げる“LifeWear”のステートメントに、「服に個性があるのではなく、着る人に個性がある」という一文があるが、Tシャツはまさに自己を表現するためのツールで、人となりや人の個性を際立たせるもの。Tシャツという、世界中の誰もが買えるものをきっかけにカルチャーを知る。アーティストのことは最初は知らなくても、Tシャツからコミュニケーションが生まれて文化として根付いていく。「UT」はそんな形を目指してきた。

――アジアの「ユニクロ」店舗では「UT」が稼ぎ頭になっているとも聞く。

松沼:アジア、特にASEAN諸国で人気となっている。グレーターチャイナ(中国本土に台湾などを加えた中華圏)やASEANでは、「ユニクロ」の成長率以上に「UT」が伸びている。19年秋に「ユニクロ」が初進出したベトナムでも驚くほどの売れ行きだ。若年人口が増加中で、これからどんどん発展していくような国や地域で、「UT」は面白いと思ってもらえている。プリントTシャツをきっかけにして、その背景にある文化を知るような動きは、日本では“裏原”ファッションの時代に広がったが、それが今アジアにも広がっている。さまざまなジャンルのカルチャーについて情報収集しながら編集していくという手法は、とても日本的だ。たとえば、20年春夏の「UT」でも、単にディズニーと協業してTシャツを作るではなく、「アンブッシュ」のYOONさんとミニーマウスを掛け合わせて、「DISNEY LOVE MINNIE MOUE COLLECTION by AMBUSH」という形に落とし込んでいる。「ナンヅカ」のアーティストと組むにしても、そこに“日本”を掛け合わせて、「NEO-MIYAGE」という編集にした。

――今季取り上げているアーティストのうち、たとえばYOONや空山基は「ディオール(DIOR)」、ピーター・サヴィル(Peter Saville)は「バーバリー(BURBERRY)」などとの仕事でも知られている。それらラグジュアリーブランドと「UT」のゴールはどう違う?

松沼:(「UT」と組んだことがある)アーティストのカウズ(KAWS)に以前言われて嬉しかったのは、「『UT』と組むことで、今までは全くリーチすることができなかったターゲットにもアートの価値を伝えることができる」ということ。コラボ相手のアーティストたちは、そこに魅力を感じてくれているのだろう。アーティストがラグジュアリーブランドとも、世の中のインフラのような「UT」とも組むという価値観はまさに“スーパーフラット”だが、自分のことを知らない人たちが自分の作品をまとっているというのは、彼らにとってはアーティスト冥利に尽きるんだと思う。「UT」では、1500円でキース・へリング(Keith Haring)のTシャツを売っている。アートは庶民にとっては敷居の高いもの。しかし、繰り返しになるが、誰もが買える価格のTシャツでこれをやるということが、カルチャーリテラシーを上げることになる。

――今回、「UT2020 magazine」を作成した理由は?元「ポパイ(POPEYE)」編集長の木下孝浩ファーストリテイリング グループ上席執行役員が編集している?

松沼:これまでもカタログは作ってきたが、それぞれのTシャツがどういう思いで作られているのかといったことをよく知ってもらうためには、協業したアーティストのインタビューをしっかり届けるのがいいと思った。ファッションシューティングも盛り込んでいる。紙の雑誌として1冊にまとめると、デジタルな情報から受け取るものとはまた印象が違ってくる。(木下上席執行役員が編集の指揮を執るのではなく)「UT」のチームで作っている。

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