ファッション
連載 編集長・向の今日は誰と会って、何食べた?

編集長はパリコレで何をした?Vol.1 新型コロナの不安を抱えた初日 「マメ」とアフリカ勢、「ルブタン」から元気をもらう

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向千鶴です。今週から2020-21年秋冬パリコレ取材に来ています。日記に入る前にちょっと長い前置きになりますが、聞いてください。

 新型コロナウイルスに関しては、イタリアで感染者が急増したことでヨーロッパでも緊張感が高まっています。パリコレに来ている関係者の数はいつもの1/4くらいでしょうか。ブランドのプレス担当者からは「行くのを止めました」と連日電話やメールをもらいます。皆さんプロなので冷静ですが、行間からはやるせない感情が伝わってきます。“個人的には行きたいけれど会社の指示で断念”とか“感染や人種差別が怖くて海外には行きたくない”、“仕事相手のことを考えて辞退”など本当にいろいろで複雑。出張に限らず、刻々と変わる状況を前にして、方針や正論ではかたずけられないいくつもの感情の間で揺れ動き、その中で何かを決断している人は多いのではないでしょうか。

 われわれも悩みましたが話し合い、細心の注意を払いながら取材をする選択をしました。正論はニュース媒体だから。それではかたずけられない個人的な感情は、こういう時だからこそそこで何が起きているのか、ファッションはどう動くのかを自分の目で見て伝えたいから、です。エゴかな。

 私以外の取材メンバーは、ドイツ在住で「WWDジャパン」のヨーロッパ通信員の薮野淳(長らくコレクション取材を担当しており歩くファッション辞典みたいな知識量。特にバッグや若手デザイナーへの愛情が半端ないです)と、ソーシャルエディターの丸山瑠璃(デジタルにめっぽう強く“歩くデバイス”みたいな24歳。今回はダニエル・リー(Daniel Lee)の「ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のブーツをはいて走り回っています)。前置きが長くなりましたが、これから約1週間、それぞれの視点でのパリコレレポートにご期待ください!

1月23日(日)17:00
パリ到着と同時に「ピカール」へ

 パリに到着してすぐにスーパーと冷凍食品専門店「ピカール」(PICARD)に行って食材を大量に買い込みました。定宿はキッチン付きなので、今シーズンは外食をなるべく控えて自炊します。冷蔵庫が冷凍庫付きでホントよかった!もちろんお米とみそ汁は持ってきましたよ。移動は車を基本とし、窓を開けて、除菌アルコールを車に常備。車にお茶を常備するためポットも買っちゃいました。ほぼロケバス(笑)。ちゃんと寝てちゃんと食べて、薄着をしない。毎朝体温を測り万が一熱が出たらその日から取材を止めて部屋から出ない、が取材チームで決めたルールです。

1月24日(月)17:00
トップバッターは「マメ」

 さて、「マメ(MAME KUROGOUCHI)」が今季もトップバッターです。「マメ」が持つ日本らしさって着物など分かりやすいモノだけではなく、日常の習慣や所作といった目には見えない感覚だと思います。前回に続いてキーワードとなっている“包む”もそう。この言葉から自分が連想するのは、袱紗で祝儀や香典を包む行為とそれをするときの“そっと”した感情です。“包む”から広がった籠のイメージやテクニックがたくさん登場しましたが、それも床に座り籠を編む人の集中力や静かな動きが目に浮かびます。海外で発表している以上、肝心なことは海外の人にも伝わるかですが、会場で「マメ」を着ている人を見ると伝わっているな、と思います。

18:00
メランコリックな
韓国ルーツの「キムヘキム」

 移動中も気になるのは、日本から届く新型コロナ情報。韓国も感染者が急増している今、韓国にルーツを持つ「キムヘキム(KIMHEKIM)」の人の入りにも響く?なんてことが頭をよぎりましたが愚問でした。注目若手デザイナーは多くの人を集めていました。ロマンチックでパンキッシュ。音楽が最高で永遠のユース感。ファッションのある意味王道を行くスタイル、好きです。

19:00
アフリカ勢のハッピーオーラに
癒された「ケネス イズ」

 昨年度の「LVMHプライズ」のファイナリストのひとり、ナイジェリアの「ケネス イズ(KENNETH IZE)」の会場はアフリカ勢の応援団が集まり高テンション。これからアフリカが来るな~、を実感します。アフリカの伝統的な織物を使った服を男女や国籍問わず着て歩くショーはハッピーオーラ満載。客席も同様で、色々な国・肌の色の人が時間を共有しているからか、会場を後にする時は“パリコレで人種差別にあったらどうしよう”なんて危惧がすっかり薄らいでいました。

20:00
テンションマックス!な
「クリスチャン ルブタン」展覧会

 夜は12区の国立移民史博物館で開催される「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」のオープニングパーティーへ。ってなにこれすごい!巨大な建物が真っ赤に染まりルブタナイズされております。中はもう、めくるめくルブタンの世界で最高に楽しいです。詳細は追って(薮野が)リポートしますが、まずは写真をチラ見してください。ホテルを時に抱えていた不穏な感覚はすっかり消えていました。これがファッションのパワーですね。展覧会は5カ月開かれるそうで、必見です。

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