マリーン セル(MARINE SERRE)
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DESIGNER/マリーン・セル(Marine Serre)
根底にあるテーマは変わらず、温暖化が進む地球とそこで生き延びようとする人間たち。登場するルックも既視感あるものが多いが、マスクやフードで身を守る姿は新型コロナウィルスにおびえる現代人を投影しているようで迫りくる。会場は現代アートを扱うアートスペース。19世紀から長く葬儀場として使われたと聞けば一層おどろおどろしい。そんな演出をのぞけば、サバイバルに適した服とはつまりは機能的で動きやすい服。ボディースーツとジャージーといったヨガウエアのような服や日よけつきの帽子とつなぎ、ハンズフリーになるボディーバッグなど。最後はおそろいのフリルのドレスを着た幼い姉妹が手をつないで登場し明るい未来をのぞかせる。
ディオール(DIOR)
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DESIGNER/マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)
出発点は、マリア・グラツィア(Maria Grazia)がまだ10代だった頃の日記。その中の写真からイメージをふくらませ、1970年代ムードにスポーティーな要素を掛け合わせた。キーモチーフは、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が愛したチェックとドット。チェックは、マルク・ボアン(Marc Bohan)時代のバイアス使いのスタイルをスカートのシルエットの着想源にしたほか、さまざまな色とデザインでコートやジャケット、ドレスに落とし込んだ。一方、ドットは黒のネクタイで引き締めたシャツや柔らかなドレスに採用した。デザインで印象的なのは、フリンジ。アウターやスカートの裾のディテールや糸状の細い長いもので仕立てたドレスが、躍動的なイメージを生み出す。また今季は、ファーストルックのスーツスタイルを筆頭に、ニットでの表現も豊富だ。
アンリアレイジ(ANREALAGE)
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DESIGNER/森永邦彦
「アンリアレイジ」はもう5年以上パリコレで発表しているが、昨年の「LVMHプライズ」でファイナリストに選ばれた経験は、森永邦彦の自分らしいクリエイションへの自信につながっただけでなく、周りからの見る目も変えた。それは、ショーの空気感からも感じられる。
テーマは“ブロック”。「つくってはこわし。こわしてはつくる。」をキーワードに、半円柱や直方体、三角柱といった積み木のような形をした複数のパーツをつなぎ合わせて作る構築的なウエアを披露した。縫うのではなくブラインドホックを使うことで、自由に組み合わせたり、取り外したりできる構造になっているのがポイント。裾や袖の長さも、パーツの付け外しで調節可能だ。ベースとなるアイテムは、トレンチコートやMA-1、ジャケット、アランニット、ダウンコート、ダッフルコートといったワードローブの定番が中心。終盤には、さまざまなアイテムのパーツをハイパーミックスしたスタイルで、子どもがおもちゃで遊ぶように無邪気に楽しめるファッションを提案した。
サンローラン(SAINT LAURENT)
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DESIGNER/アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)
エッフェル塔前の広場に今季は巨大なテントを建て、これまた巨大な「YSL」のロゴを前に一方通行のワンウエイショーを行った。ムッシュ・サンローラン時代のアーカイブから着想を得た生地を使い、1990年代調に落とし込む。曲線美を見せつけるスタイルは変わらずだが、真冬のホットパンツは封印し代わりにカラフルなレギンスを選んだ。主役は何と言ってもバリエーション豊富なジャケットで、素材や色を変えて“これでもか!”と言わんばかりにメンズライクなテーラードを打ち出した。大きなラペルの中に合わせるのはボウタイブラウスかハイネックのニットと、こちらも潔い。情報過多な時代、強烈な演出と徹底的にひとつのアイテムに絞り込む見せ方はうまい戦略だ。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員