繊維商社大手のモリリンは、韓国のスタートアップ企業で非フッ素系の撥水加工技術「ブルーロジ(BLUELOGY)」を持つTFJグローバル(TFJ GLOBAL)と資本業務提携した、と発表した。モリリンはTFJグローバルに出資(出資額は非公表)し、同社の加工したテキスタイルや2次加工製品を日本市場で独占的に販売する。フッ素系の撥水加工は2009年に国連環境計画(UNEP)で問題提起され、フッ素系加工剤に含まれる物質PFOA(パーフルオロオクタン酸)を問題視したことから、フッ素フリーの撥水加工の開発が世界中で進んでいた。TFJグローバルは独自に非フッ素系の加工剤と架橋剤、特別な加工設備を開発。韓国を筆頭に日本や米国、中国にも特許を出願、あるいは取得しているという。従来は撥水加工が難しかったジーンズやカシミヤ100%のストールなどに加工し、欧米の有力ブランドに供給している。
TFJグローバルは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)出身のジン・イギュ(陳宜奎)社長兼CEOが、父親で繊維関連の企業を運営していたチン・ソンイン(陳成寅)会長とともに2015年7月に創業。これまで韓国の有力ベンチャーキャピタル(VC)などから70億ウォン(約7億円)を調達しているが、日系企業からの出資は初めて。革新的な非フッ素系の撥水加工「ブルーロジ」は韓国でも高く評価されており軍や消防服などにも採用されているほか、「エコテックス スタンダード100」認証を有している。陳CEOは「『ブルーロジ』の特徴は、コットンやカシミヤといった天然素材からポリエステルやナイロンなどの合成繊維まで、素材を選ばず加工できること。その上、テキスタイルだけでなく、2次製品への加工も可能で、風合いも損なわない」と語る。
TFJグローバルは昨年11月にソウル郊外に、80億ウォン(約8億円)を投じ、「ブルーロジ」専用の新工場を設立。これまで外部の賃貸工場で生産していた分も集約し、生産能力を倍増。加工能力はテキスタイルが月間80万ヤード(約72万メートル)、製品が同14万枚になる。モリリンの土屋英樹・常務取締役は「TFJグローバルは現在、非フッ素系の防汚加工も開発中で、開発力は非常に高い。モリリンの既存の商売だけでなく、今後は新規開拓にも力を入れる」という。一方、陳会長も「長い歴史を持ち、日本市場に精通しているモリリンをパートナーにできたことは、当社の発展にとっても非常に重要な意味を持つ」。