新型コロナウイルスの感染拡大を受け、百貨店やセレクトショップの中には、担当者による海外コレクションへの出張の見合わせる動きも見られる。海外出張は、海外ブランドとの商談のチャンスであり、現地での買い付けアイテムは、売り場に鮮度と独自性をもたらす重要なピース。出張の取り止めは、各社にどのような影響をもたらすのか。
大手百貨店は例年、経営幹部やファッションディレクター、バイヤーなど、数人~十数人の体制でコレクション出張を実施している。三越伊勢丹と高島屋は今回、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリへの出張を全て取り止めた。大丸松坂屋百貨店はロンドンとミラノコレクションには通常通りの人員を割いたが、パリへの人員は削減した。阪急阪神百貨店は海外ブランドとのやりとりをメールで行う方針だ。
各社は、海外出張を現地ブランドの関係者との貴重なコミュニケーションの場として捉えている。出張の中止で、現地のブランドの誘致交渉や良好な取引の維持に悪影響が出ることを危惧する。「海外ブランドの上層部と接することが難しくなる」(大丸松坂屋広報)、「本来フェイストゥーフェイスがベストだが、日本での展示会やデジタルツールなども活用しながらリレーションを取っていくことになる」(三越伊勢丹広報)。各百貨店はそのような関係維持の努力によって、バイヤーによる現地の工場などに出向いての買い付けはできなくなるものの、「影響は軽微」と見通す。
セレクトショップでは、ベイクルーズがパリ以外への出張を取り止めたものの、ユナイテッドアローズ、ビームスは欧米のコレクション出張を平常通り実施した。ユナイテッドアローズは「今のところバイイングへの影響は小さい」としながら、中国を生産拠点とする取引先も多いため、「影響は不透明」と気をもむ。「取引先ブランドがどのようなタイミングで、どのような規模の生産計画を立てるのか。こちらでコントロールできない分、こまめな情報収集と機敏なジャッジが重要になる」(同社広報)。