腸内環境の解析事業を行うベンチャー企業オーブ(AUB)と国内大手メーカー京セラ、プロサッカークラブの京都サンガF.C.の3社は共同研究契約を締結し25日、都内で共同記者会見を行った。オーブが持つ腸内環境の解析データを活用し、アスリートのパフォーマンス向上に加え、選手だけでなく一般の人の健康寿命の延伸を目指すという。
腸内フローラは人間の主に大腸に生息する細菌でその数は1000種類、100兆~500兆個以上ともいわれている。これら多種多様な細菌がバランスをとりながら、腸内の免疫細胞を活性させたり病原菌などから体を守るなど、健康でいるための重要な役割を果たしている。
オーブは、サッカー元日本代表である鈴木啓太氏が代表を務めるスタートアップ企業。会社を設立した2015年から、トップアスリートの便を集めて解析を行ってきた。その数は500人を超え1000検体以上、競技は28種目にものぼる。
今回の締結により、今年2月に京都サンガF.C.のU-18(高校生)に所属する選手29人の便について検査・分析を実施。1年間の契約期間中に、計6回の検査とフィードバックを実施する予定だ。腸内環境を把握し、食生活や課題を洗い出した上で、それぞれの選手に合わせた食事や睡眠など生活習慣について助言する。京都サンガF.CのU-18は、全寮制で朝・夕食は栄養バランスに優れた同じメニューを取る。「似通った生活の中でパフォーマンスをどうしたら高めることができるのかは、チーム育成のための課題の一つ。データの蓄積はチームに取って財産になると考えている」と京都パープルサンガの伊藤雅章社長は語った。
オーブの鈴木代表は「現役時代から腸内環境の重要性を認識し、コンディションを整えてきた。アスリートの腸内細菌を研究することで、アスリートだけでなく多く人の役に立ちたいと考えている。健康寿命を延ばすという意味においては、スポーツをしていてもしていなくても課題は同じはず」と述べる。
今回のプロジェクトで京セラは、トイレで便の臭気(ガス組成)を採取する小型の計測端末の開発と人工知能(AI)を使い、腸内環境の傾向を予測する技術の開発を進める。京セラの吉田真・研究開発本部メディカル開発センター所長は、「日常生活で必ず使うトイレで無意識的にデータを収集計測できるのは大きな強み。匂いでどこまで精度を上げられるかが課題。2〜3年以内のサービス提供を目指したい」と意気込みを語った。