公正取引委員会(以下、公取委)は2月28日、楽天が3月18日から実施する予定のいわゆる“送料込みライン”問題について、緊急停止命令を東京地方裁判所に申し立てた。各種報道によると、公取委が緊急停止命令を申し立てたのは16年ぶりだという。
楽天がネット通販モール「楽天市場」で販売する3980円以上の商品は一律で送料込みの価格表示にすることを決めたことを受け、「楽天市場」の出店テナントで構成される任意団体「楽天ユニオン」は反対を表明。楽天が規約を変更することは独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当する恐れがあるとして公取委が調査を進めていた。
楽天の三木谷浩史会長兼社長は、当初掲げていた“送料無料ライン”という表現について「誤解を生みやすかった」として名称を“送料込みライン”に変更したが、導入の必要性を引き続き主張し、当初の予定通り3月18日から導入すると発表していた。
公取委はこれを受け、「相当数の出店事業者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害し、自由な競争基盤に悪影響を及ぼす状況が続くことになるとともに、当該出店事業者とその競争者との競争に重大な悪影響を及ぼすなど、公正かつ自由な競争秩序が著しく侵害される」ことを理由に、「排除措置命令を待っていては、侵害された公正かつ自由な競争秩序が回復し難い状況に陥ることになる」として申し立てを行った。
独占禁止法に詳しい渥美雅之弁護士は、「公取委が申し立てを行ったところを見ると、その本気度がうかがえる」と説明する。「公取委はプラットフォーマーに対する独禁法の執行を強化している。今回緊急停止命令を申し立てたということは、楽天の行為を優越的地位の濫用と認定する方向で検討しているものと思われる」という。