コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)
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DESIGNER/川久保玲
「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」がまたひとつ新しいフェーズに入ったようだ。今季、川久保玲が残した言葉は、「ネオ・フューチャー」。12月にウィーン国立歌劇場で発表した「オーランドー」の衣装デザインを通じてジェンダーとは?の問いを観る者に投げかけたが、川久保の視点はどうやら次の “まだ見たことないもの”へ向けられている。
音楽は、1ルックごとに変わる。DJのようななめらかなつなぎはなく、モデルが消えるとブツリと切れて次のモデルが登場するとやや乱暴に別の曲が始まる。クラシックとポップミュージックが交互にかかり、1ルックごとに完結した世界を見せる。
服も身頃と袖とスカートといった一般的な洋服のパターンはなく上と中と下や、右と左などで色も素材も形も違う。子どもが積み木を自由に重ねるように、バラバラが重なりひとつのカタチを作る。色も、ネオンピンクや赤、白、黒、グリーン、ブルー、イエローとパーツごとにバラバラでそれぞれが強く主張をする。そこには“ちょうど良い”とか“バランスが取れている”といった予定調和な着地はない。展示会で発表されたコマーシャルアイテムもまた、袖と身頃の素材がまるで違っていた。強い個性のパーツがぶつかり合う服がショーピースだけではなくリアルクローズに必ず落とし込まれているのが「コム デ ギャルソン」の強さだ。
ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)
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DESIGNER/渡辺淳弥
音楽は無音が数ルック分続いた後に、大音量でのブロンディ。モデルの唇はセックスシンボルでもあったデボラ・ハリー(Deborah Harry)ばりに艶のある赤リップだ。キーカラーは黒と赤。黒いフェイクレザーはよくみるとバッグを解体し、服に仕立てられている。バッグの底は袖の膨らみとなり、ファスナー部分はフレアスカートのパーツとなって開くと中からチュールのスカートがのぞく。
“バッグを解体し服にする”と言葉にするのは簡単だが、立体から立体に仕立て直すパターンはパズルのように複雑。バッグの存在感を残しつつ、あくまでデボラ・バリー的セクシーに、そしてロックに着地させた探求心と技術が凄みにつながっている。ストラップやファスナーといったディテールもデザインに生かし、ハーネスもナイロンのストラップだ。
ノワール ケイ・ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)
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DESIGNER/二宮啓
二宮啓のクリエイションが凄みを増している。初の公式スケジュールでの発表となった今シーズンは、バラの花をいくつも象ったような真っ赤なチュールドレスからスタート。赤の持つエネルギーに着目し、黒へと移り変わるイメージをドラマチックに表現した。
使用するのは一般的に服に使われる素材に加え、アクリルの人工毛やフィルム、メタルのワイヤー、安全ピンまで。これまでと同じく、金具で留めたり、つなぎ合わせたり、編み込んだりと、生地を縫う以外の技術を駆使してアイテムを仕上げている。足元はイギリスの老舗シューズブランド「チャーチ(CHURCH’S)」とのコラボシューズ。ヘアはフラワーアーティストの東信(あずままこと)と現代アーティストのショップリフター(Shoplifter)が手掛けた。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員