レナウンが親会社である中国・山東如意科技集団の香港子会社から売掛金53億円を回収できずに営業赤字に陥った問題について、レナウンの神保佳幸社長は2日の会見で「必ず解決できる」と説明した。主販路である百貨店の客離れに加えて、シナジーを高めるはずの山東如意グループに足を引っ張られる異例の事態で、同社は窮地に追い込まれている。
レナウンの2019年12月期連結業績(決算期変更に伴う10カ月の変則決算)は、売上高が502億円、営業損益が79億円の赤字、純損益が67億円の赤字だった。近年の営業損益は本業のアパレル低迷によって、わずかの黒字と赤字を行ったり来たりする状況が続いている。だが67億円もの多額の最終赤字は初めて。原因は山東如意の子会社で香港に拠点を置く恒成国際発展有限公司の売掛金の未回収によって貸倒引当金を計上したためだ。
レナウンは世界中から仕入れた羊毛や綿花を恒成国際に販売し、恒成国際はそれを中国のアパレルなどの取引先に収めている。だが、「米中貿易摩擦の影響によって資金回収が滞っている」(神保社長)事態になった。
恒成国際に支払い能力がなければ、親会社の山東如意が肩代わりする取り決めになっていたが、それも実行されていない。山東如意は12月の社債返済を優先させた。山東如意は英ブランド「アクアスキュータム(AQUASCUTUM)」やスイスの「バリー(BALLY)」、米スパンデックス繊維「ライクラ(LYCRA)」などの大型のM&Aを相次ぎ行った結果、債務返済に窮していた。神保社長も「対外投資が多額になり、資金の工面がつかなくなっていたのではないか」と見る。
異例の事態に神保社長は「当社には山東如意から取締役も入っており、この問題には一致団結して当たっている」「(支払いの)時期は明確になっていないが、取締役会で解決できると見ている」との見通しを示し、山東如意との関係悪化を否定した。
レナウンが10年に山東如意のグループに入って今年で丸10年を迎える。当初構想していたシナジー効果が現状では得られていない。レナウンは山東如意のサポートを受けて何度か中国出店に乗り出したものの、商習慣や嗜好性の違いからうまくいかず、あえなく撤退している。国内での百貨店離れによる苦戦、さらに中国・香港に起因する貸倒引当金の計上など、内憂外患に直面する。これまでの10年の総括と、今後の連携のあり方が問われている。