世界のトップ女性アスリートたちがアニメの主人公となり、美しさを比べる不毛な競争をやめてルックスに対する批判や他人と比べられることに対するプレッシャー、押し付けられたイメージといった“Kaiju(怪獣)”をやっつけるーーそんな、美しさのあり方を問うキャンペーン動画が、「SK-II」スタジオのアニメーション シリーズ「VS」だ。「SK-II」は東京2020オリンピックの公式スキンケアブランドとして、キャンペーン「#NOCOMPETITION 美は #競争ではない」を2月にスタートさせた。女性たちがさらされている「美しさに対する競争」を取り払い、競争からのプレッシャーで自分の持つ可能性を狭めることなく、美しさは自分で決めようというポジティブなメッセージを発している。動画シリーズ「VS」では、美の競争について「トロール」「プレッシャー」「イメージの強迫観念」「ルールによる束縛」「自分の限界」「機械のような完璧さ」という6つの異なる側面からこの問題を切り出し、“Kaiju(怪獣)”の姿となったそれらと対峙する6組のアスリートの姿が描かれる。キャンペーン動画本編は4月に世界同時公開予定だが、それに先駆けて米ニューヨークでティザー動画が披露された。
バイルス選手が“怪獣”として襲いかかる
ネット上の批判に立ち向かう
3月3日夜(現地時間)、ニューヨークのタイムズスクエアで41の大型デジタルビルボードを用い、「#NOCOMPETITION 美は #競争ではない」の予告動画が上映された。会場には、アニメ動画の主人公の一人でもある、体操選手のシモーン・バイルス(Simone Biles)が登場。リオ五輪の体操競技で金メダル4冠に輝く、不世出のジムナストとして名高い選手だ。彼女は、「私は競技で争うことは好きです。けれども美で争うことは嫌いです」と語る。「この動画は、私の人生最大の闘いでもある美しさに対するネット上での批判について描いています。自分のストーリーを多くの人と共有できたことは、大きな意味がありました。私と同じように美の批判を受けたことがある若い女性に、他人が決める美の基準と闘っているのは自分だけではないということを知ってほしいです。美しさは自分自身で定義するもの。私たち自身の美しさを他人が決めるべきではないのです」。アニメの中でバイルス選手のアバターは、彼女のルックスや態度についてオンラインに投稿された批判ツイートやネガティブなコメントに攻撃される。それが大きな“Kaiju怪獣”となって襲いかかるが、自分らしさを取り戻してそれを倒していくストーリーになっている。
「VS」にはバイルス選手のほかに、水泳選手のリウ・シアン、卓球のオリンピックメダリストの石川佳純、同じく金メダリストのバドミントンペア、髙橋礼華と松友美佐紀、公式種目に初採用されたサーフィン選手の前田マヒナ、そしてバレーボール女子日本代表チーム「火の鳥NIPPON 」の選手が登場する。それぞれアニメの主人公となって、不必要な美の競争に対して6つの異なる側面から闘う。動画制作では、アカデミー賞を受賞したパッション ピクチャーズ(PASSION PICTURES)やプラティーグ(PLATIGUE)、イマジナリー フォーセズ(IMAGINARY FORCES)をはじめ、シモーン・バイルス選手のストーリーの音楽はジョン・レジェンド(John Legend)とコラボするなど、トップレベルのクリエーターが制作に関わっているのも特徴だ。
綾瀬はるかとシモーン・バイルス、
自身の美についてパネル登壇
そして4日(現地時間)には、「SK-II」が掲げる「#NOCOMPETITION」のパネルインタビューがソーホーのホテルで行われた。はじめに登壇したケイシー・メイ・オライリー(Kaisy Mae O’Reilly)「SK-Ⅱ」ブランドディレクターは、「『SK-II』は、自らの意志で運命は変えることができると、女性が勇気を持って動き出せると信じています。そんな女性を応援しており、16年からこの信念を『運命を、変えよう。〜#changedestiny〜』というブランドテーマのもと、さまざまなキャンペーンを展開してきました」と説明。
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ニュースキャスターでジャーナリストのケイティ・クーリック(Katie Couric)が司会し、バイルス選手にパネルインタビューを行った。キャンペーンについてバイルス選手は「美しさは他人が決めることではない。女性も男性も、少年も少女も同様に、私たちをむしばむ美の競争から抜け出せるように、美しさとは自分の内面にあることを伝えたくて賛同しました」と発言。ネットでの心ない書き込みに傷ついたという過去の体験をシェアして、「筋肉がつきすぎているとか、ふくらはぎが太いとか、腕が太いといった批判コメントがありました。泣いたこともあります。そこから抜け出すのには、しばらくかかりました」と述べた。「たしかに私は一般的な女性に比べたら、筋肉がついています。けれども、それは私が競技を勝ちぬくために必要なもの。この体が勝利に導いてくれるのです」。そしてまた体験をシェアすることが自分にとって大事だったと語った。
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サポーターを務める「SK-Ⅱ」のブランドアンバサダーの綾瀬はるかもタイムズスクエアイベントに参加するためにNYを訪れ、本パネルに登壇。女優という職業として闘ってきた「 #NOCOMPETITION」について、クーリックのインタビューを受けた。綾瀬は「演技の世界でも同じです。正解がない世界なので、常にさまざまな意見にさらされやすいのですが、その中でも自分らしくあることが、一番大事だと思います」と話した。「あなたにとって美しさとは?」という問いには、「自分らしくあること、そして周りに惑わされずに自分が信じる方向に進んでいくことが美しさにとって大事なことだと思います」と答えた。
女性でも男性でも、ルックスについてのコンプレックスや他者からのプレッシャーを感じたり、あるいはネットで他者の悪口に傷ついたりすることが頻繁に起きる時代だが、美しさは競争ではなく、みずからが決めるものだというメッセージは、美のあり方についてもポジティブに考え直す機会を提供してくれるだろう。近日中に公開される6種類の「SK-IIスタジオアニメーションシリーズ “VS”」本編にいっそうの期待が高まる。
TEXT : ERI KUROBE
SK-II