ニューヨーク・メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)では毎年5月に、衣装研究所(Costume Institute)によるファッションの展覧会を行っている。今年の展覧会のテーマは「時間について:ファッションと持続(About Time: Fashion and Duration)」で、スポンサーは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が務める。
同ブランドのウィメンズ・アーティスティック・ディレクターで、展覧会のオープニングイベント「メットガラ(MET GALA)」の共同ホストを務めるニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は、仏パリのオルセー美術館(Musee d’Orsay)で行われた記者会見で、「私は未来に残るファッションを作るために、過去のシルエットや技術、記憶、インプレッションなどを最新技術と融合させてきた」と話した。
ジェスキエールは、2020年春夏シーズンでアールヌーヴォーのエッセンスを取り入れたコレクションを発表したり、ルーブル美術館(Louvre Museum)に宇宙船のような巨大なセットを設置してショーを行うなど、ファッションに過去や未来のテイストをふんだんに取り入れてきた。
また、ジェスキエールにとって最も印象的なアイテムのひとつだという18年春夏コレクションの錦のフロックコートには、同衣装研究所のアーカイブから直接影響を受けたデザインを施していることも明かした。
ジェスキエールは、「世界一重要なアーカイブを常に参考にできるのはありがたいこと。衣装研究所のおかげで私自身にも他のデザイナーたちにも、そしてファッション業界そのものにも活気が与えられていることをありがたく思う。おかげで、私たちの作品が価値ある文化的な芸術品に生まれ変わり、衣服という宝物が私たちの過去、現在、そして未来のストーリーを作っていくことになる」と締めくくった。
パリ・ファッション・ウイーク期間中の早朝に行われたこの会見には、マイケル・バーク(Michael Burke)=ルイ・ヴィトン会長兼最高経営責任者やアナ・ウィンター(Anna Wintour)=米「ヴォーグ(VOGUE)」の編集長らも参加した。
今年はメトロポリタン美術館の創立150周年でもある。同美術館ディレクターのマックス・ホライン(Max Hollein)によると、今回の展覧会では同美術館が設立された1870年から現在までの1世紀半の間に制作された120点の衣服が展示されるという。展示品の大半は衣装研究所のアーカイブから出展されるが、同美術館のアニバーサリーイヤーということもあり、デザイナーたちからの寄贈品も展示される予定だ。
アンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)=メトロポリタン美術館衣装研究所キュレーターによると、衣服は2つの並行したタイムラインに沿って展示されるという。展示される衣服のうちの60点は黒を基調としたもので、1870年から現在までのものが年代順に並べられる。それに並行する形で黒と白を基調にした残りの60点の衣服が別のラインで展示される予定だ。
また、現在のファッション業界がソーシャルメディアに大きな影響を受けていることもあり、展覧会ではそれに関連した“生産の加速化”についても触れられる。ボルトンは、「近年のファッション業界は時間に追われている。インターネットと結び付いた21世紀という時代において、ファッション業界の議題はもっぱら生産の促進と流通、消費についてだ。情報テクノロジーは間違いなくファッションに大きな影響を与えている。企業が能率を重視して24時間のデジタル資本主義によって利益を生み出している中で、デザイナーたちは休みなく創作活動を強いられている。この展覧会は現代のファッションを歴史的に考えてみるよい機会になるのではないか」とコメントした。
展覧会のプレス向けの公開は5月4日で、一般公開は5月7日~9月7日の予定だ。