ワコールは2月21日に重力に負けない“バストケアブラ”を発売した。同商品は“重力によるバストの皮ふの伸びを抑え“バストケアができる”というもので、ボディーケアという新しい領域にアプローチしたブラジャーだ。“重力に負けないブラジャー”と聞くと、下からがっちり支える構造かと思ったが、実際に着用してみると、軽やかでバストを優しく包むイメージ。カップの内側に少し浮いたように付けられた新開発のバストケアシートが機能のカギで、ぴたっと密着する感触がバストが動かない心地よさを生む。“動かないけれど、圧迫感はない”点がこのブラジャーの一番の魅力だろう。
“重力”という、大人の女性に響くキーワードで打ち出された新製品に説得力を持たせたのが、1964年から女性の人体測定を行い、データ収集と分析を行ってきたワコール人間科学研究所(以下、人科研)の実験結果だ。今回の新製品を開発するにあたり、飛行機の急上昇後に急降下することで約20秒間の無重力状態をつくり、その間にバスト計測をするという無重力実験を行っている。その実験により、無重力状態がバストへの負担が少ないことがわかり、無重力状態に近い丸胸に整える製品として“バストケア ブラ”が開発された。
本来、女性のバストは100人いれば100の形があり、自らのバストに対する意識も加齢によるバストの変化にも個人差がある。着け心地や肌触り、着用後の体の変化などは下着としては重要であるが、その基準は非常にあいまいだ。それゆえ、下着のセールスコピーには不安をあおる言葉や定義のない言葉が一人歩きし、間違った認識が広まることも少なくない。人科研では、形、動き、感覚、生理などにフォーカスして研究や実験を繰り返すことで結果を導き出し、そのあいまいさを可視化している。その結果に基づいたモノ作りこそが、世界に誇るワコールの革新性と優位性だ。
「CW-X」のスポーツブラや就寝時用“ナイトアップブラ”も、人科研の研究から生まれた製品だが、ワコールは今春、これらをスポーツ時や就寝時にかかる重力からバストを守り、バストケアするブラジャーとしてユーザーに訴求していく。バストの形やブラジャーの在り方にも多様性が求められる今、バストを美しい形に整える“バストメイク”の先を見据えた、“バストケア”や“ボディーケア”のアプローチがユーザーに気付きを与え、下着業界の新たな潮流になることを期待したい。
川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身