YKKはファスニング事業の2020年3月期が、売上高が前期比13.4%減の3079億円、営業利益は39.5%減の324億円になりそうだと発表した。期初は増収増益を計画していたものの、米中貿易摩擦に伴う中国経済の急減速や暖冬による世界的な衣料品市場の低迷が直撃した。YKKはラグジュアリーからボリュームゾーン、グローバルSPA、量販店まで幅広いマーケットで高いシェアを有しており、同社の業績低迷は2020年度の世界の衣料品市場の先行きを表す。
YKKの大谷裕明社長は「2年連続の暖冬による流通在庫過多、ブルーデニムの市場の縮小、さらには新型肺炎の流行など足元を取り巻く事業環境は厳しい」として、20年の世界の衣料品市場に対して厳しい見方を示しており、21年3月期の業績も売上高が同0.1%減の3074億円、営業利益が同16.9%増の379億円と、ほぼ前年並みを計画する。
市場の低迷を反映し、20年3月期には489億円を投じていた設備投資も21年3月期は339億円と大幅に減少させる。設備投資の打ち合わけは自動化などが121億円、パキスタン工場の増設などの増産投資が97億円、老朽に伴う入れ替えなどが121億円になる。
商品開発では海洋プラスチックごみを主材料にした「ナチュロン オーシャン ソースト(NATULON OCEAN SOURCED)」やコンプライアンス基準の引き上げなどのサステナビリティ強化に加え、イスラエルとシンガポールの2拠点に本社を置く3DデジタルCADシステムのブラウズウェア(BROWZWEAR)とコラボレーションし、3Dバーチャル企画対応を強化する。