ファッション
連載 編集長・向の今日は誰と会って、何食べた?

編集長はパリコレで何した?Vol.6 加茂さんを思い走った一日 “ギャルソン”ファミリーは今季も強かった

 この日、加茂克也さんの訃報を聞きました。ご家族や近くで仕事をしてきた人たちの思いには到底及びませんが、やはりショックは大きく、午前中のジュンヤさんのショーの後は涙が止まりませんでした。自分にとってはコレクション取材を始めた1990年代後半の「アンダーカバー」の東コレやパリコレデビューに始まり、心に残るショーの多くに加茂さんが関わっていらっしゃいました。バックステージでの取材に対しては言葉少なで、若かりし日の自分には近寄りがたい存在でしたが、それでも話を聞きたいと駆り立てられる強いクリエーションを持つ方でした。加茂さんが日本のファッション界にもたらした功績の大きさは計り知れません。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

2月29日(土)9:30
“ジュンヤ”流セクシー

 「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」はぜひ動画を2つ続けて見てください。1つ目はショー開始後の数ルックの様子で赤い照明の中で音楽はナシ。モデルの足音とカメラのシャッター音だけが響きます。2つ目はその後、突如大音量でロックが流れた後のシーンです。曲は1980年代に一世を風靡したブロンディ(Blondie)。赤い唇はずばり、ボーカルのデボラ・ハリー(Deborah Harry)ですね。服はマニアックなまでに新しい形を突き詰める中で、フェティッシュに“ジュンヤ”流セクシーを探求しております。バッグを解体して仕立て直したような服は、ハーネスも実はバッグのショルダーです。

10:30
「ハイダー アッカーマン」に見る
ヤンキーの色気

 無音のフィナーレ、カッコいいですね。シャープでアンドロジナス。いわゆる“男らしい”“女らしい”の表現ではないのに、色っぽい。色っぽさって、自分に嘘をつかずに生きている人、スタイルがある人から立ち昇るものですよね。と「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」を見ると思います。という意味で、フィナーレの最後を飾ったメンズの背中にご注目ください。ヤンキーがなぜ色っぽい(もちろん全員ではない)のかがちょっとわかります。

12:00
本当に強い
「ノワール ケイ ニノミヤ」

 強い、本当に強い。「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」の二宮啓さんは本当に強いクリエーションを持つ人です。朗らかで頭の良い方ですが、それ以上に内なる情熱に真摯で怖いくらいです。これを着ることができるかできないか、など関係ないです。二宮さんという一人の人が内側から湧き上がる何かを“人が着る”形にしている訳ですが、見る人はその情熱に引き付けられて、自分も近づきたいと思って服を手にする。デザイナーズブランドの変わらぬ生き方です。今の時代にそれを成し遂げているから凄い。ヘアはフラワーアーティストの東信×アーティストのショップリフターが手掛けたそうです。

13:00
「ロエベ」の展示会で
カワイイを連呼

 昨日のショーが素晴らしかったので近くで見たくて「ロエベ(LOEWE)」のショールームへ。展示会でカワイイを連呼する自分を戒めたいと思いつつ、思わず連呼。日本語のカワイイはもはや感嘆詞ですね。“可愛らしい”という意味に止まらず、愛おしい、美しい、身につけたい、などさまざまなニュアンスを含みます。

13:30
「デルヴォー」は
マグリッド第2弾

 「デルヴォー(DELVAUX)」の今季は夜のイメージ。加えてルネ・マグリット(René Magritte)シリーズ第2弾の登場です。3枚目の写真の他、ゴールドのリンゴが取っ手の横に堂々と載っていたり。日本とも相性がよさそうです。

14:30
79歳の
ヴィヴィアン・ウエストウッド、
来場する

 「アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(ANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD)」には個性的なファッションをした人が大勢集まりますが、それでも一番のインフルエンサーはヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)本人です。ヴィヴィアンはいつも早めに会場に入って席に座り、来場者とのスナップに応えています。新型コロナウイルスがパリにも広がる中、高齢のヴィヴィアンはどうするのかな?控えた方がよいのでは?と思っていたのですが、今回も来場しました。さすがにショーが始まる直前に入場しましたが、十分な存在感です。

15:00
移動中に薬局に立ち寄る

 移動中に薬局に「マスクあります」の張り紙を発見。そう、街中ではほぼ誰もマスクをしていないパリでもマスクが不足し始めています。試しに購入しようとしたら、なんと!1枚約1300円。英語で話しかけたので外国人と見て値段をあげた模様。足元を見て高すぎです。買いませんでした。

16:00
注目の「ロク」は花のランウエイ

 日本のバイヤーやジャーナリストからも注目されている若手の「ロク(ROKH)」。ランウエイに鉢植えの花を敷き詰めてランウエイを作りました。透ける素材のレイヤードなどほどよくトレンドを取り入れ、個性的。

17:00
動画見てほしい
「コム デ ギャルソン」

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」はぜひ動画で見てください。こちら、いくつかのルックをつなぎ合わせたものです。見ていただくとわかるように、ルックごとに音楽がブツリブツリと変わります(この動画は実際のショーのルックの並び順ではありません。いくつかを選んで編集しています。実際にはクラシックとポップスが交互に使われていました)。ひとつのショーなのに、それぞれが独立している印象で、新しいルックが出てくるたびに見ている側の意識が更新されます。服もパーツごとに色や素材がぱっきりと変わります。さらなる新しいカタチの追求、と私は見ました。

18:30
「カイダン・エディションズ」の
シャツ

 「カイダン・エディションズ(KWAIDAN EDITIONS)」と言えばシャープで丈が長めのシャツとパンツが私のイメージです。今シーズンも同じ型のシャツが登場しつつ、素材はラテックス(に見えた)などトレンドもしっかり入っていました。

20:00
「エルメス」の馬への情熱を見る

 以前、「エルメス(HERMES)」が主催する障害馬術大会“ソー・エルメス”を取材したことがあり、その時に「エルメス」の馬への並々ならぬ思いを知りました。単にアイコンとして“使用”しているのではなく、馬の強さ、知性、美しさそのものをリスペクトしクリエーションのインスピレーション源としています。今回はその障害馬術で使用するバーがインスピレーション。服にはそのカラーリングが取り入れられています。そして会場にはバーでできた森が作られていました。

JUNYA WATANABE x コレクションの記事

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。