ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングは3月6日からの2020年度採用活動で、顔写真の提出を不要とした。また、性別記入欄をなくすほか、氏名も名字のみとし、性別が判別しやすい名前(ファーストネーム)の記入もなくす。無意識に生じる性別への先入観を排除し、個人の適正と能力に焦点を当てた採用活動を行うことが目的で、同社が手を組む就職・転職サイトなどでも同様の取り組みを行う。ユニリーバは世界190カ国で展開しているが、性別表記などの廃止を自主的に実施するのは日本が初めてとなる。
同社ヘアケアブランド「ラックス(LUX)」が、採用の書類審査を担当したことがある会社員、会社経営者424人に行った調査によると、4人に1人にあたる26.6%が「採用過程において男性と女性が平等に扱われていない」と感じていると答え、履歴書の写真が合否に影響していると感じる人が44%いたという。
ダイバーシティーの流れが加速する中でも“無意識の偏見”は存在する実情を踏まえ、「LGBTQなどさまざまな偏見もあるが、まずは日本で一番多く課題がある性差から取り組んだ」(島田由香ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス人事総務本部長)。対象は同社の全部門で、工場採用も男女を記入しない方式にする。男子校や女子校出身者は経歴によって性別がわかる場合もあるが、島田人事総務本部長は「もともと学歴は選考基準になく、情報は届いているが各部門に渡してはいないため、問題ないと考えている」とコメントした。
採用活動をサポートしている就職・転職サイトでは、システムの都合により名字と名前の両方を記入する項目があるが、その際は名前の部分にも名字を記入するよう促す。また、あらかじめ登録している情報の中から、候補者の性別に関する情報を隠した状態でユニリーバ・ジャパン側に渡すという。そのほか、履歴書の提出が必要な中途採用に向け、独自に顔写真や名前、性別の項目をなくした履歴書を作成し、ダウンロードできるようにする。
ユニリーバは10年に掲げたジェンダー平等の目標である「20年までにグローバル全体で女性管理職比率を50%まで引き上げる」取り組みをこの3月3日に達成したが、ジャパン社単独で見ると女性管理職は38%にとどまっている。今回の採用方式によって社員の男女比率やグローバル目標の女性管理職登用推進にも影響が出ることも考えられるが、“採用基準は能力と可能性であり性別ではない”という方針のもとに、取り組みを進める。