新型コロナウイルスの影響による経済的損失の規模が次第に明らかになってきた。中国では2月10日から企業活動が再開されたものの、店舗も工場も地域によってはいまだ正常化には至っていない。国連貿易開発会議(U.N. Conference on Trade and Development以下、UNCTAD)が3月4日に発表したリポート「世界貿易における新型コロナウイルスの影響(Global trade impact of the Coronavirus (COVID-19) Epidemic)」によれば、中国での生産が劇的に縮小した結果、2月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は37.5と2004年以降で最低を記録。これをもとにUNCTADは、世界のバリュー・チェーンにおける輸出額がおよそ500億ドル(約5兆3500億円)相当減少すると試算した。なお、このうちテキスタイルやアパレル関連は15億ドル(約1605億円)相当となっている。
製造業全体で見ると、最も大きな影響を受けるのは欧州連合(EU)の156億ドル(約1兆6692億円)相当で、米国の58億ドル(約6206億円)と日本の52億ドル(約5564億円)相当がそれに続く。日本向けでは、主に機械類や自動車部品の輸出が減少している。テキスタイルとアパレル関連で見ても、やはり最も影響を受けるのはEUの5億3800万ドル(約575億円)相当で、以下ベトナムの2億700万ドル(約221億円)相当、トルコの1億6420万ドル(約175億円)相当、香港の1億700万ドル(約114億円)相当となっている。
パメラ・コーク・ハミルトン(Pamela Coke-Hamilton)UNCTAD国際貿易部ディレクターは、「製造業で中国が占める割合の大きさを考えると、新型コロナウイルスが世界の貿易に甚大な影響を与えることは明白だ」と語った。国際的に取引される半製品のうち20%程度が中国製だという。
アレッサンドロ・ニチタ(Alessandro Nicita)UNCTAD国際エコノミストは、「中国はファブリックやジッパー、ボタンなど、衣料品向けの素材や部品の一大生産地だ。イタリア、フランス、スベインなどのアパレルメーカーは中国のサプライヤーへの依存度が高いので損失が大きいだろう」と述べた。同氏はまた、「新型コロナウイルスの感染拡大が抑制できない場合、各国の経済に与える影響は甚大であり、世界的な不況を引き起こす可能性もある。しかしこれ以上の感染拡大を避けることができれば、いずれ経済も回復するだろう」と説明した。