「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は、ファンタジーの世界へと来場者を誘うプレゼンテーション“ホテル ヴィヴィエ(HOTEL VIVIER)”を開き、2020-21年秋冬コレクションを発表した。ユニークな世界観を作り上げるゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターが今季着目したのは、感覚を研ぎ澄まして体験する「センソラマ(SENSORAMA)」。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚からなる“五感”を表現した部屋を用意し、その中で象徴的なモデルのアレンジを軸にした新作を見せた。そんなプレゼンテーションの模様をリポートする。
1:嗅覚の部屋
「嗅覚の部屋」では、ガラスのフレグランスドームの中にカラフルな“アイラブ ヴィヴィエ”のスリングバッグパンプスを展示した。その一つひとつには「ピンクローズ」や「イエローシトロン」などに香りを想起させる名前が付けられていて、「嗅いでみる?」と部屋にいる女性に促されるが、実際の靴に香りはない。その他、“アイラブ ヴィヴィエ”から新作としてミュールが登場した。
2:触覚の部屋
ピンクのフワフワした素材で至るところを覆った「触覚の部屋」では、“ベルサイユ宮殿の高級娼婦”という設定の華やかなドレスを着た猫たちがお出迎え。ベルベットやスエード、サテンを用いたデコラティブなミニバッグやクラッチ、筒型のボトルバッグ、ホワイトスニーカーに加え、コスチュームジュエリーも並べた。また、甲にビジューがあしらわれたスクエア型フレームを配した新作のパンプスも披露。
3:視覚の部屋
「視覚の部屋」では、暗闇の中で2人の女性が蛍光塗料を使ったペインティングを楽しんでいる。その横でスポットライトに照らされるのは、「ロジェ ヴィヴィエ」のアイコニックなアイテムの一つであるサイハイブーツ“クイサード”をアレンジした新作“ベルヴィヴィエ クイサード”。スクエアトーの“ベルヴィヴィエ”のラストを用い、ネオンカラーやシルバーのモデルにフリンジの装飾を施しているのが印象的だ。合わせて、ブーツのデザインにマッチする“RV ミニ バッグ”も展示した。
4:聴覚の部屋
「聴覚の部屋」では、メイド風の怪しげな女性がASMRサウンドのレコーディング中。来場者に「あなたは何の音が好き?教えて……」とささやきながら、紙をちぎったり、気泡緩衝剤(いわゆる“プチプチ”)を潰したり。そんな部屋に並べられたのは、パテントのチャンキーヒールブーツや誇張されたポインテッドトーのキトゥンヒールショートブーツといった強めのスタイル。そのほか、ホテルのスリッパから着想を得た新型モデルも披露した。
5:味覚の部屋
「味覚の部屋」では、希少性にフォーカス。バースデーケーキ型のセットの上に座ったグラマラスなシンガーがギターの弾き語りを披露する中、手作業でパールやビジュー、フェザーの装飾を施した1点もののハンドバッグ“ヴィヴ カヴァ”をバリエーション豊富に並べた。
6:第六感の部屋
そして最後には、秘密の部屋として「第六感の部屋」を用意。ミステリアスな占い師が待つ空間では、自分自身の感覚を研ぎ澄ました人には本来見えないゴーストやファントムの姿が見えてくるという。そこに並ぶのは、「視覚の部屋」にも展示された“ベルヴィヴィエ クイサード”にたっぷりとフェザーやパールの装飾を施したクチュールピース。中には、100時間をかけて製作されたものもあるという。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員