フリーランス・ビンテージバイヤーの栗原道彦は、運営する古着店ミスタークリーン・ヨコハマを横浜から東京・渋谷に移転して3月7日にオープンした。これに合わせて店名もミスタークリーンに改名。路面店となり、売り場面積も1.5倍以上の約42平方メートルに拡大した。
栗原は、「横浜店はスペースの制約から商品を厳選せざるをえず、雑貨などは並べられなかった」と振り返り、「山の上から横浜の街を一望できる見晴らしや、米軍ハウスが隣接する雰囲気の良さはあったが、元町・中華街駅からバスで20分とアクセスは悪かった。地元客を想定していたが、ふたを開けてみると都内からの来店がほとんどで、彼らに1時間半の道中を強いることになっていた」と移転の理由について答えた。
ミスタークリーンがオープンした奥渋エリアを含む渋谷は“100年に一度の改革”が進行中で、栗原も「盛り上がりを感じる」と話す。「賃料も上昇しており物件が出てもすぐに埋まるが、坪単価3~4万円の原宿や青山エリアに比べたら現実味がある。またファッション業界人やクリエイターも多く住む」と分析する。このエリアには古着店も増えているという。
新店に並ぶのは、ほぼ全て栗原自身がアメリカで買い付けた品だ。「アメリカには、ビザなし滞在の限界である年間6カ月滞在して買い付けを行っている」と言い、店内には第2次大戦以前のものから2000年ごろのものまである。卸も行っており、金額ベースで4割ほどを占める。またリメーク用の資材となるものを「77 サーカ(77 CIRCA)」や「メゾン エウレカ(MAISON EUREKA)」などのブランドに販売している。これも4割ほどを占め、ミスタークリーンで小売りする分は約2割。「それもあって、最近ではおもしろいと感じれば年代を問わないで仕入れるようになった。つまりビンテージ一辺倒ではない」。卸先には海外も含まれ、香港、台湾、マカオ、韓国などに取引先がある。
“ミスタークリーンらしさ”について問うと、「普通の古着を普通に売りたい。あくまで消費者目線で、自分でも買う値段で売ることを心掛けている」という。「古着は、どうしても下に見られやすい。それを避けるために商品は洗濯やクリーニング、リペアを経て店頭に並べる。また、間接照明で汚れやダメージをごまかすこともしない」。そのため店内の照明は昼白色にしてある。「新品を扱うのとなにも変わらない」と続けた。商品に付ける下げ札もほぼ全て栗原の手書きで、ブランド名やモデル名、年代やリペア箇所など客に必要な情報を網羅する。店頭に並ぶ700~800点分を書くのに、「値付けも含めて1週間はかかる」という。
そんな栗原の努力をよそに、アメカジ古着店は減り続けている。そういう状況に唇をかみしめつつ、「僕はアメリカが好きだから続けられている。そして、客は夢を買ってくれていると感じる。ストーリーを伝えるために、現地からインスタグラムなどで買い付けの様子をアップしている」と話す。ご祝儀代わりの購入も含め、ミスタークリーンはオープン後初の土日で200点を販売した。「予想の1.5倍ほどの売り上げだった」という。「信頼していただいていると感じるし、“この店で買いたい”“この人から買いたい”と思ってもらえるのは服屋の本懐だ。今後もアメリカ買い付けをやめるつもりはない」と結んだ。
■ミスタークリーン
オープン日:3月7日
時間:12:00〜20:00
定休日:月曜日
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-35-4 1階