17歳でモデルデビューし、今年38歳を迎える冨永愛。3月に行われた2020-21年秋冬パリ・ファッション・ウイークではランウエイを歩き、10年ぶりにパリコレ復帰を果たし話題になった。現在はモデルのみならず、女優、執筆、テレビ、ラジオ、イベントでのパーソナリティーなど活躍の場を広げている。その冨永の初となるビューティブック「冨永愛 美の法則」(ダイヤモンド社)が3月12日に出版された。長年トップモデルでいるための肌や体のケアから生き方、パリコレ復帰について語った。
WWD:「冨永愛 美の法則」を発刊することになったきっかけは?
冨永愛(以下、冨永):自ら企画して1年くらいあたためてきたものです。最終的に美容本としてまとまっていますが、自分の生き方や考え方も盛り込まれているのでライフスタイル本でもあります。美に関しては食事、トレーニング、肌や体のケアなど、これまでの積み重ねで現在に至り今の答えに行きついたからこそこの本を出すタイミングになったのだと思います。
WWD:これまでの積み重ねの集大成だと。
冨永:今の冨永愛が成り立つ要素の全てがここに書いてあります。10代、20代ってそんなに美については考えてこなかったと思うのですが、30代になり年齢的な変化を迎えて自分と向き合い、答えに至るまでの月日が流れて“時が満ちた”という感じですね。
WWD:具体的な日々のスキンケアについてのこだわりは?
冨永:保湿に関しては若い頃からずっと大事にしていて、コスメは合う合わないがあるから実感できるものや効果で選んでいます。私はもともと乾燥肌だったのですが、外からの保湿だけでなく、いいオイルを摂取したり、じんわり汗をかくような運動をしたりするなど、肌の血流がよくなることによって、内側からも巡りをよくするように心掛けています。それによって乾燥が改善されましたね。食べるものから細胞は作られるし、どういう生活を送っているのかが関係してくるので。
WWD:トレーニングはどのくらいのペースで行っている?
冨永:ジムやヨガに通っているのですが、だいたい週3回くらいは運動しています。3月にパリコレに行っていたときは週1回くらい。時間が許す範囲です。運動は20代に出産してから始めたかな。運動ってメンタルにすごく影響していて、身体を動かすとネガティブに考えにくくなったりもするし。そして運動することでよい睡眠がとれるからメンタルにもよく、いろんな作用があると思います。
WWD:食事で気を付けていることは?
冨永:体調管理として自分で作れるときは毎日作ります。ドラマの撮影だとケータリングも多くなりがちで、そうなったときに体調で「あれっ」と思うときがあったので、家で作って持って行ったりしていました。肉や野菜はバランスを考えています。お肉は食べる時間や量を気にしていますね。今のところお昼に食べるのがベストかな。身体にあまり負担にならないような食べ方を意識しています。
WWD:ストレス発散や切り替え方法は?
冨永:寝ることです。夜12時くらいまでにはなるべく寝るようにして7時くらいに起きています。睡眠時間は最低7時間確保したい。美容面においても十分な睡眠は大事ですし、7時間以下だと、どうしてもパフォーマンスが落ちてストレスもたまってしまうので。
普段から基礎をつくっていると
大変な時に乗り切れる
WWD:スキンケア、食事、運動、睡眠といったトータルとしてのライフスタイルが大切だと。
冨永:そうですね。結局全てつながっているんだと思います。どれもおろそかにできない。もちろん仕事の関係でおろそかになってしまうときもあるから、そうなってしまうときのために普段からしっかりし基礎をつくっておくと、忙しい時も乗り切れるんだと思います。
WWD:本の中でとくに思い入れの強い章やエピソードは?
冨永:全部かな(笑)。一つを選ぶのは難しいですね。チームのスタッフみんなで考えて作り上げたものなので。
WWD:本の売り上げの一部をジョイセフ(JOICFP)に寄付するとのことだが、あらためてジョイセフではどんな活動をしている?
冨永:ジョイセフとは、女性の健康といのちを守る団体です。主に途上国の妊産婦の女性を支援しています。東日本大震災をきっかけに国内でも活動をしていて、今は途上国に限らず活動しています。医療面での現地のスタッフの育成や妊娠、出産、中絶に関わる医療施設の建設、マタニティーハウスの建設、この3つに関わるものの支援です。
WWD:その活動を通じで学んだこと、感じたことは?
冨永:学んだことはとても大きかったですね。10年ほどアンバサダーをしているのですが、世界で起きていることを知る前と知った後だと、自分がいかに恵まれた環境で生きているのかを感じますし、同じ女性として平等であるべきと思います。出産することは人生のギフトであるにも関わらず、生と死のギリギリのところに立たされてしまう。自分が生きているこの時間、同じ時間でそのような人たちも生きている。「これまでと何が違うのか」と聞かれると説明が難しいのですが、知る前と知る後では全然違う。自分の視野を広げることになったと思います。
WWD:それによって価値観や生き方にも影響を受けたと?
冨永:自分が恵まれているのではあれば、支援をするのは当たりまえだと思っています。東日本大震災の時もそうでしたが、皆さん「募金するだけで私たちは何もできない」とおっしゃったりしますが、でも募金することが素晴らしい一歩であって、活動を知る一歩でもあると思うんです。私たちはその基金で活動できているので、とても大きな力なんですよね。寄付することに関してそう考える日本人の奥ゆかしさを感じます。その寄付がすごく大きなことなのですから。
パリコレの復帰で思うこと
WWD:10年ぶりにパリコレのランウエイに立って、モデルとして何か変化はあったか?
冨永:すごく変わりましたね。自分の年齢で歩けるということも時代の変化だと思うし、多様性と言われる時代だからこそ、10代のモデルや私のような30代のモデル、サイズ違いのモデルとか、国の違いも超えてランウエイに立てるようになったのかなと。そういった時代の流れがなければ、もしかしたら歩けていないかもしれない。それはすごく感じました。
WWD:さまざまタイプのモデルが登場してきていることに関してはどう思う?
冨永:これまでは若くて背が高いことがいいモデルの条件で、しかもそれは一握りでしたがそれ自体も多様化しており、さらに最近ではインスタグラマーやインフルエンサーなど、本業がモデルじゃない人にも門戸が開かれていますよね。誰でも歩けるというわけではないけれど、間口が広い分、激戦になり、モデルとしてはある意味難しくなっています。じゃあ何が必要かといったら「個性」になってくるのではないでしょうか。でも10年ぶり歩いて純粋に「帰ってきたな」という感じはしました。楽しかったし。デザイナーやスタイリストさんと、より関わりを持つようになったかな。以前は時間もなかったですし、現場に行って歩いて終わりだったんですが、「より理解しよう」とか「どうしてなんだとう」と思うようになったり。年齢だとも思いますが、いろんな意味で余裕が出てきたんでしょうね。
WWD:現場でとくに感じたことは?
冨永:モデルの待遇がすごくよくなったということですね。2017年にモデルの痩せすぎ問題や労働環境についていろんな人たちが声を上げてくれるようになったので、それはすごく変わっていました。水と食料はどこのブランドでもいつでもありましたし、モデルに対してのリスペクトを感じました。きちんと人間扱いをしているというか。それはうれしかったです。
WWD:パリのランウエイを久しぶりに歩いて、また来シーズンもチャレンジする?
冨永:何かよっぽどのことがない限り、多分トライすると思います(笑)。今、モデル以外にもしていることが多岐にわたっているので、一つ一つを丁寧にやっていきたいと思っています。もちろんモデルは自分の軸としてちゃんとやっていきたいですし、女優や執筆にしても軽くできないし、リスペクトして向き合いたいと思っているので、できる限りチャレンジしたいですね。