大学卒業後にシューズデザイナーとしてデビューした三原康裕氏は、その後スニーカーやウエアラインを展開するなど第一線でファッション業界をけん引し続けてきた。三原氏が手掛ける「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」のコレクションに使用される裏地素材の一つに「ベンベルグ」がある。「ベンベルグ」は、旭化成が世界で唯一生産する再生セルロース繊維・キュプラのブランドであり、生分解性を持つサステナブル繊維でもある。素材としての「ベンベルグ」への信頼に加えて、環境問題に対して作り手としての強い責任感を持つ三原氏。プレスルームとアトリエで、その思いを聞いた。
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先日発表したばかりの「メゾン ミハラヤスヒロ」20-21年秋冬コレクション。異素材のドッキングや肩パッドなど、三原氏らしい“再構築”のディテールが光る。そんな最新コレクションのジャケットの裏地に「ベンベルグ」が使用されている。「コートやジャケットの場合は特に、袖を通したときの肌当たりや落ち感に(裏地の役割が)重要になってくる。『ベンベルグ』はしなやかで、程よい光沢感は表地として使用しても嫌味がない」と信頼を寄せる。
生分解性を持つ素材
「ベンベルグ」
天然由来原料の「ベンベルグ」は、土に埋めると微生物の働きにより分解され、堆肥化される生分解繊維である。また、燃やしても有害物質の発生がほとんどなく、環境負荷も少ない。三原氏自身、学生時代に「ベンベルグ」を自宅の庭の土に埋め、生分解性をその目で確認したことがあるという。
「ファッションの本質は退屈な日常を面白くするもの。環境に負担をかけない洋服だから買いましょう、というようなセールストークではサステナビリティは浸透しない」と語る三原氏。だからこそ、作る側はサステナビリティ重視と同様に、“かっこいい”“素敵”という素直な視点で選んでもらえる洋服を提案すべき、というのが同氏の考えだ。「その分、経済的、社会的、環境的にもうまく循環できるためのシステムを作らなくてはならない。安心感をセールストークにするのではなくて、何を買っても安心というようなレベルを目指すことを目標にしていかないとね」と語る。
ファッションのトレンドは変化する。そのことに対し三原氏は、「流行すればするほど、速いスピードで消費されてしまう。サステナビリティという言葉がブームとしてもてはやされ、数年後に『こんなこと、そういえばみんな言っていたよね』ということになってはならない」と警鐘を鳴らす。
「自戒を込めて言いますが、僕らファッション業界に身を置く者たちは、時代に翻弄されやすい。だからこそ環境問題への取り組みは、トレンドとはしっかり切り離さないといけない。時間をかけて、じっくり着実に進めていくべきだと思う」。そう話す表情に一人の作り手としての強い責任感をにじませた。
“心臓部”であるアトリエ
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アトリエには、素材やボタンの大量の見本のほか、インスピレーションをかき立てるビンテージミリタリーや本が並ぶ。「当時のミリタリーを見ていると、“実用”という観点だけでは説明できないデザインがある。明らかに“着飾るため”というデザインを見つけると、なんだかうれしくなるよね」とはにかんだ。
MOVIE:KENICHI MURAMATSU
PHOTOS:SHINJI YAGI
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU
旭化成パフォーマンスプロダクツ事業本部
ベンベルグ事業部ライニング営業部
03-6699-3805