三越日本橋本店は、6階美術品フロアに現代アート画廊「三越コンテンポラリーギャラリー」を18日オープンした。ギャラリー新設の目的は、近年の若い富裕層をはじめとした幅広い層からの現代アート需要の高まりを受けたもので、「美術品フロアのファンの裾野をさらに広げていく」(太刀川俊明・三越伊勢丹美術営業部長)狙い。このギャラリーを目玉とした30年ぶりの大規模改装で、美術品フロアを従来に比べて約25%広い約1500平方メートルに増床した。
「三越コンテンポラリーギャラリー」は、グレーのステンレス素材に囲われたモダンな外装だが、中に入ると一転、木目調を基調とした温かみのある空間が姿を現す。環境設計は建築家の石田建太朗が手掛けた。現代アートの専門担当が常駐し、2週間ごとに企画展を実施する。オープンから30日までは、現代美術家・日比野克彦による個展「Xデパートメント 2020」を開催し、作品を展示販売している。
これまでの売り場では、日本・西洋の近代絵画や彫刻、陶器などを中心に取り扱ってきたが、「水彩画や油絵、さらにはダンボールのような異素材も融合するなど、従来の価値観にとらわれない作品が増えている。アート表現の多様化とともに、それに対応する売り場として(今回のギャラリーを)設けた」(太刀川営業部長)。
また、“おもてなし世界一”を掲げる同店は1対1の接客も重視。ギャラリー横には、額装、家庭での設置など美術品に関するさまざまな相談事を受け付けるカウンターを設置した。
富裕層だけでなく、幅広い消費者のアートへの関心の高まりを受け、同フロアの売上高も緩やかな右肩上がりが続いている。増床効果として、21年3月期の同フロアの売上高は前期比10%増を目指す。
「日本のアート産業に関する市場調査 2018」(一般社団法人アート東京調べ)によると、国内の年間美術品消費2460億円のうち、百貨店での購入金額は644億円と、全体の4分の1以上を占める。中でも三越日本橋本店の美術品売上額は国内トップで、2位以下を大きく引き離している。
三越日本橋本店は18年10月に化粧品や雑貨、特選などを改装する第1期リニューアルを行った。19年春からの第2期改装では時計、紳士、婦人などを対象にテコ入れし、今回の美術品フロアで完了する。