新型コロナウイルスは、米国や欧州などいよいよ世界に飛び火し、世界中の株式市場でリーマン・ショックを超える猛威をふるい始めた。現地の大手メーカー兼MDによる、香港と中国本土の現地リポート第3弾をお届けする。
2月末、欧州各国の顧客とのミーティング出張に行っていたデザインチームからメールにて「新型コロナウイルスを懸念し、ミーティング直前のキャンセルが相次いでいる」との連絡があった。デザインチームはそのとき、すでに香港を出てから14日以上を経過していたにもかかわらずのキャンセルに驚いたが、その後の欧州における急激なウイルス拡散には恐怖としか言いようがない。当初デザインチームは、3月末までミーティング目的の出張予定だったが、ほとんどがキャンセルとなったため、2週間早く予定を切り上げ帰国の途についたものの、今度は自宅かホテルでの2週間の強制検疫が待っている。今日に至っては、オーダーキャンセルが可能かと、進行中の企画についての見直し依頼の連絡が来始めた。新型コロナウイルスが世界各地に広がる前は、納期遅延の懸念だけだったが、この数週間ですっかり状況が変わってしまった。小売りの先行きが見えず、リスク回避のためにオーダーをキャンセルするクライアントも出てくると予測される。
香港では在宅勤務解除でマスク着用率6割以上
香港では、3月に入り政府機関の在宅勤務が解除されたことに伴い、多くの一般企業も業務を再開し、朝夕の交通量に変化が見られた。人の流れが多くなることとで、香港に駐在している欧米人にもマスクの着用者が増えている。アジア人のマスク着用率は非常に高く、街中では9割を超えるほどだ。従来マスクを着用する習慣がない在香港欧米人には、マスク不足という状況もあるが、「着用したところで感染を防ぐことはできない」という欧米メディアの発表も影響してか、あまり浸透していなかった。ところが、欧米諸国における急激な感染拡大を受けて3月以降は着用者が増えた。「国民の6割がマスクを着用すれば、感染予防の機能が期待できる」というフランス国内の報道を耳にしたが、香港では確実に駐在欧米人を含む市民の6割以上が着用している。3月中旬、香港でも日々感染者は増加しているが、急激な変化は見られない。SARSの経験と中国ならびに香港政府への不審感からか、過度と言えるほどの住民の自己防衛本能が現状維持に貢献しているとさえ思える。世界各地で日用品の買占めが起きているが、前回リポートした2月中旬に香港で起こったことと全く同じ現象だ。香港でも、日本でも、実際には在庫は十分にあるというが、不安に駆られて列をなし、買占めと転売が発生する。SARSの際にはなかったSNSによるデマの伝播力にも恐怖を感じる。
14日間の強制検疫で分断される香港と中国
中国工場の状況に関しては、広州に隣接する江西省南部の工場も稼動し始め、人員も9割程度を確保できている。また、契約を結んでいる日系の検品会社も稼動を開始したが、5割強の人員確保とのことだ。弊社では「4月中旬から検品の訪問を受け入れる」としている。これも弊社独自の現状の取り決めであるが、弊社工場への立ち入りについては湖北省と温州市からの人員(内部・外部問わず)に対して14日間の強制検疫を行っている。中国の工場にはトップマネジメント級の香港人スタッフが数名いるが、彼らは通常であれば週末は香港に戻り家族と過ごすが、今は全ての中国滞在者が香港に入国するには14日間の強制検疫があるため、帰れない状況だ。一方で、中国に一度入国すると香港に戻れなくなるため、現地で工場管理を余儀なくされている日本人やその他の外国人も大勢いる。
大手銀行のPRによると、つい1週間前までは全てのイベントを中止または延期し、その処理に追われ多忙を極めていたが、このところは顧客離れを防ぐためZoomなどを使った″オンタイムで特別な体験を”や″パネリストとの意見交換が可能“といったバーチャルイベント等に企画を切り替え始めているという。外出できない、集えない、外食できない今、自宅にこもって参加し、共感できる何かが求められるのであろう。