「ファインクリークレザーズ(FINE CREEK LEATHERS)」は、ホースハイド(馬革)のみを用いて東京で自社縫製するレザージャケット専業ブランドだ。中心価格帯は12万~15万円。東京・大森に自社工房を構え、7人の職人が製作に携わる。山﨑佳克デザイナーは「多くのオーダーをもらっているが日産3枚が限界で、生産が間に合っていない」と言う。北海道から鹿児島までセレクトショップを中心に約25店舗で販売され、米国のセルフエッジ(SELF EDGE)や英国のリベット アンド ハイド(RIVET AND HIDE)など国外9カ国に卸している。「売り上げの半分を海外卸が占める」という。ボブ・ディラン(Bob Dylan)の息子でミュージシャンのジェイコブ・ディラン(Jakob Dylan)や、スペイン人カリスマシェフのセルジ・アローラ(Sergi Arola)も顧客だ。
同ブランドのモデルも務め、「365日レザーウエアを着る」という雑誌「ライトニング(LIGHTNING)」(えい出版社)の小川高寛ディレクターは、「『ファインクリークレザーズ』の魅力は革質に尽きる」と言い、山﨑デザイナーも「タンナーにレシピを渡して革をなめしてもらっている」と自信を見せる。原皮選びにも厳しい目を向け、なめした革は自社で裁断する。これにより、さまざまな個性を持つ革を自在にデザインに当て込むことができる。
ドイツ・ベルリンで行われる合同展「シーク(SEEK)」やニューヨークの「リバティ・フェア(LIBERTY FAIRS)」にも出展する。その際にも、「ひと目で質の高さを知らしめる必要がある」と山﨑デザイナーは言う。同ブランドがテーマとする“アメリカンビンテージ”の世界には、レガシーとしての“型”が存在する。それを外し過ぎればバイヤーからそっぽを向かれ、忠実復刻一辺倒では埋没してしまう。バイヤーがブースの前を通る瞬間に主張し、タッチさせ、羽織らせるだけの革質が求められる。「その分、食い付かせたら高確率でリピーター化できる」。
針の穴を抜くようなニッチさで熱狂的なファンを抱える「ファインクリークレザーズ」だが、山﨑デザイナーの経歴もまた特異だ。出身地の北海道で中学校の音楽教師を務め、23歳のときに上京。スタイリストとしてテレビドラマの衣装などを手掛け、その後タレントが手掛けるファッションブランドの生産管理を行った。さらにアパレルメーカーで企画・生産を経験し、2017年に独立。クリエイティブワークスを設立し、「ファインクリークレザーズ」をスタートさせた。
今後については、「“レザージャケットといえば『ファインクリークレザーズ』”となるのが目標だ。そのために革質を極めたいし、海外戦略も続ける。一方で、日本市場にはアメリカンビンテージとモードの間に隔たりを感じる。その壁を打ち破りたいし、モードに強いセレクトショップなどにも進出したい」と話す。
クリエイティブワークスは「ファインクリークレザーズ」のほかに、馬以外の革も扱うレザーウエアブランド「ファインクリーク&コー(FINE CREEK & CO)」、ワークウエアブランドの「シーワークス(CWORKS)」、高機能素材を用いる「モシール(MOSSIR)」の3ブランドを持つ。