ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業と日立造船は、100%植物由来のバイオポリマー「トチュウエラストマー」を使った化粧品の容器と原料の共同開発を3月から開始する。環境に配慮した植物由来成分を化粧品容器と原料に活用する共同開発は国内で初めてとなる。
両社は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、CO2排出や廃棄プラスチックの削減など環境課題の解決を図る取り組みを進める中で、化粧品分野においても環境にやさしい容器と原料の開発を進めるべく2019年3月から本格的に検討を開始し、共同開発に着手することを決めた。
トチュウ(杜仲茶の木)から抽出・精製した100%植物由来のバイオポリマー「トチュウエラストマー」は、柔軟性に優れ、衝撃に強く、水をはじくといった性質を持っており、化粧品の容器および原料に適していると判断。その特徴を生かし、環境に優しい自然に返る容器としての活用と、 高い肌実感機能を持つ化粧品原料の2つの開発テーマで進める。
容器に関しては、これまで植物由来の生分解性プラスチックが衝撃に弱いことが課題だった。しかし、植物由来の生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)に「トチュウエラストマー」を5%で混ぜると、耐衝撃性が約2.4倍にまで高まった。また「トチュウエラストマー」の遮水機能は高密度ポリエチレンに匹敵することもわかっている。これらの特徴を容器に活用することで、強度に優れた生分解性容器の実現が期待できる。日立造船では、新しい機能性材料としてゴルフボールなどさまざまな用途への展開を図っている。
化粧品原料としては、柔軟性に優れることから、「化粧品の内容物に配合するとほかの高分子にはあまり見られない弾むようなハリ実感の付与などの効果が期待できる」(ポーラ・オルビスホールディングス広報)という。化粧水や乳液、クリームなどのスキンケア品やベースメイク品などに活用できる可能性を持つ。
「早期の商品活用に向けて共同研究を進める。商品化の目途・ブランドについては、個別に検討していく」とし、植物由来の成分を活用することで、環境負荷の低い製品の実用化を目指す。
同グループでは廃棄物を減らすために、1985年からレフィル容器や詰め替え用化粧品を販売するなど、環境に対する対応を実施してきた。今回の共同開発を通じて、植物由来の素材の使用を拡大することで、消費者の求める化粧品機能を実現するとともに、持続可能な社会の実現に向けて貢献したい考えだ。