米ブルームバーグ(BLOOMBERG)は3月23日、米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営するニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)が破産法適用の申請を検討していると、関係者の情報として報じた。
NMGはここ数年にわたって経営難に陥っており、2019年2〜4月期(第3四半期)決算の売上高は前年同期比9.1%減の10億4941万ドル(約1154億円)で、純損失は3118万ドル(約34億円)と前年同期の1988万ドル(約21億円)から拡大している。同社の売上高は年間50億ドル(約5500億円)程度だが、44億6000万ドル(約4906億円)の長期負債を抱えており、年におよそ3億ドル(約330億円)の利息を払っていることが経営に重くのしかかっている。それに加えて、新型コロナウイルスの影響によって米国内の全店舗を休業していることが打撃となった。
同社の広報担当者は、「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という前例のない事態によって、ほとんどの企業が何らかの影響を受けている。当社の財務状態を維持し、世界中のラグジュアリーブランドにとって信頼できるパートナーであり続けるため、現在あらゆる手段を検討しているところだ」とコメントしたが、経営破綻の可能性については言及しなかった。
NMGは13年に、投資会社アレス・マネジメント(ARES MANAGEMENT)とカナダの公的年金運用機関であるカナダ・ペンション・プラン・インベストメント・ボード(CANADA PENSION PLAN INVESTMENT BOARD)によって60億ドル(約6600億円)で買収された。その後、業績悪化のため17年に身売りを検討しており、米百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FITH AVENUE)やロード&テイラー(LORD & TAYLOR)を有するハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY以下、HBC)が買収に関心を示しているという憶測も流れたが、NMG側はこれを否定。しかし18年3月には、両社が合併について非公式の協議を重ねていると複数の業界筋が証言していた。
今回NMGが破産法適用の申請を検討していることが事実だとすれば、HBCにとってはNMG買収のまたとない機会となる。しかしHBCも業績不振が続いており、19年10月にはリチャード・ベーカー(Richard Baker)HBCエグゼクティブ・チェアマン兼ガバナーを含めた複数の主要株主が同社の発行済み株式を買い取る形での上場廃止に踏み切っていることを考えると、NMGを買収するほどの資金的な余裕はないかもしれない。
現段階では正式な発表はされておらず、事態は流動的だ。新型コロナウイルスの影響によって世界的な経済環境が悪化していることを考慮し、債権団がNMGに返済に関する時間的な猶予を与えるなど寛容な対応を取る可能性もある。