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4大ショーの中でNYコレが一番スキ エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年9月11日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

4大ショーの中でNYコレが一番スキ

 「ラインアップがイマイチ」とか「前のシーズンのパリコレを焼き直している」とか言われますが(そして、それは100%間違いでもありませんが)、ニューヨーク・コレクションがスキです。パリとミラノ、ロンドンを含む4つの街のファッション・ウイークの中でも、一番スキかもしれません。それはなぜか?1つは在住経験ゆえの土地勘でしょうが、もう1つは「こんなに分かりやすい街、他にはない」からです。もう、ヒザ打ちすぎです。痛い、ヒザが(笑)。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)が大統領に就任して以降、その傾向はより顕著です。「愛国主義」「一国主義」を掲げるがゆえにダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂・包括性)の視点が欠けているように見える彼が大統領に就任した2017年以降、NYのコレクションは、レインボー→プラスサイズやトランスジェンダーモデル→個性そのままのすっぴんメイク→黒人デザイナー&コミュニティーの台頭→押され気味だったメガブランドが負けじと再起(今ココ)、と目まぐるしく変化し続けています。

 ランウエイ以外に目を移せば、例えば今季は「トリー バーチ(TORY BURCH)」や「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」までがマンハッタンを離れ、ショー会場をブルックリンに移しましたが、会場の分散化もアンチトランプという文脈で説明できます。次なる公式会場と目されてきたハドソンヤードの所有者がトランプ大統領に献金していたことが明らかとなり、さまざまなデザイナーがこの場所に移ることを拒否したなんてウワサがあるのです。この地権者が手掛けるフィットネス事業は今、会員数を減らし続けています。ファッションが、社会の一部であることを体感させてくれるので、毎日面白いのです。

 街を見れば、日本の行く末、将来のヒントに溢れているのも大きな特徴です。以前エディターズレターで、マンハッタンのノードストロム(NORDSTROM)のO2Oについてお話しましたが、何とメイシーズは朝7時から深夜23時までECで注文した商品をピックアップできる制度を整えていました(だったらコンビニで受け取れるようにすればいいのに、とも思いますがw)。

 また、チャイナタウン界隈には期間限定のゲリラショップ、1つの空間を複数のショップでシェアし固定費を最小限に抑えたバザー的ショッピングモールが広がり始めました。このあたりは、EC構築をサポートするheyなどのアントレ企業が、ラフォーレなどで複数店舗を束ねたポップアップを開いている戦略に似ています。最近、この手のフェアは日本でも増えましたよね。ECアプリのCreemaなどが開いている、ごくごく小規模のアーティストによる手仕事を一度に集めたポップアップなどは、固定費は最小ながら売り場に鮮度をもたらしてくれるのみならず、若手クリエイターにチャンスを与える試みとしてステキだなぁ、と思います。

 と、街を歩くだけでもいろんな発見がある。そして、それが社会と密接にリンクしているからこそ、おそらく、その大半が数年後には日本でも顕在化するNYが大好きなのです。

 ウェブでは今回、メンズ・コレクション期間中に好評だった日記のほか、他の街よりショースケジュールには幾分余裕があるからこそファッションショーについての素朴な疑問に答える新連載をアップしています。そしてこの後は、できれば、街ネタもアップしたいと画策中です(正直、ちょっとテンパってきちゃったのですがw)。ぜひこのお手紙をご覧のみなさんも、知りたいこと、聞きたいことをお寄せください。それを心に留めながら、残りのコレクション取材に邁進したいと思います。

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