カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、奈良県初のライフスタイル提案書店「奈良 蔦屋書店」を4月4日に開業する。奈良市役所前に新設される会議場・観光交流拠点「奈良県コンベンションセンター」内に出店し、観光振興施設としての役割を担う。
歴史遺産に囲まれた奈良の土地柄を反映し、コンセプトは“文化に囲まれ、毎日、好奇心の扉を開く場”に設定。書籍や雑貨、アート作品を通じて奈良の歴史や文化を学ぶ場を提供するとともに、新たな発見や驚きを生み出す提案を行なっていく。「奈良は一人あたりの外食店舗数が全国最下位のうえ、大阪や京都で買い物や食事をする人が多い。観光客はもちろん、県外に行かなくても地元の人が楽しめるワクワクできる空間を提供していきたい」と、同店をフランチャイズ運営するプレシード・パートナーズの久保田晋店長は語る。
店舗は2フロア構成で、売り場面積は3399平方メートル。開放感あふれるガラス張りの1階には、テーマごとに選書された「連続する小部屋」のほか、プラントハンターの西畠清順氏のプロデュースによる植栽に囲まれたカフェや、毎日トークイベントを開催する「天平サロン」、「中川政七商店」、文具雑貨コーナー、「スターバックスコーヒー」などを配置。2階には、時期や季節によって入れ替わるレストランと、仏像やアート作品を展示販売する「天平ギャラリー」、ポップアップストアなどで構成される。
書籍の在庫数は約16万冊で地域最大規模を誇る。なかでも力を入れているのが「食」「くらし」「旅」「人文」「アート」の5ジャンル。大阪の梅田店がビジネス系、東京の銀座店がアート系の書籍を前面に打ち出しているのに対して、奈良店では「どちらかというと生活に根ざした提案、食と暮らしの提案を強化している」(久保田店長)という。
奈良を創業地とする老舗の中川政七商店と初めてタッグを組み、売り場作りやイベント開催で協業しているのも特徴。中川政七商店の店内では調理道具売り場の隣に鍋の手入れ方法に関する本やレシピ本を配置するなど「暮らしの道具と選書を連動させることで工芸の新たな魅力に触れられるようにした」(中川政七商店・広報の佐藤菜摘氏)。
中川政七商店は2つの売り場を展開。日本の工芸をベースに衣食住を提案する売り場には約2800点、土産物やギフト商品を展開する売り場には約1000点の商品をそろえる。同店限定商品として、鹿の丸い背中をモチーフにした焼き菓子「奈良シトロン」と「手織り麻の文庫カバー」を販売し、奈良県内では初めて刺繍サービスも行う。
奈良は悠久の歴史が息づく人気観光地でありながら人口減や宿泊施設不足などの問題で、大阪や京都に比べると活気に欠ける。奈良 蔦屋書店では「伝統都市の新しいモデルを創る」というビジョンを掲げており、奈良と同様の問題を抱えている地方の伝統都市の活性化にもつなげていきたい考えだ。