東急東横店は31日夜、最終日の営業を終えて閉店した。当日は、新型コロナウイルスに伴う都からの外出自粛要請を受けて、閉店セレモニーなどのイベント中止を予告していた。だが閉店間際には報道陣や顧客が詰めかけた。
同店は2013年に東館が先立って営業を終了。西・南の2館体制で営業を続けてきたが、31日をもって、地下1階の食品売り場「東急フードショー」など一部を除いて営業を終了した。
同店はこれまで「85年分の東横総決算」と題した閉店セール(1月9日〜)のほか企画展や写真展などを開催してきた。きょう閉店1時間前の午後7時になると、「85年間ありがとうございました」という店員の威勢の良い掛け声が響き、店内は活気づいた。2階の婦人雑貨売り場「渋谷スクランブル2」はハンカチ、マフラー、手袋や折りたたみ傘などのワゴンセールに年配の女性客が押し寄せていた。東急東横線沿いに住む60代の女性は、30年以上に渡って服やバッグなど買い物の際は同店を利用してきたという。「私の生活とは切っても切り離せないお店だった」と寂しげに話した。
アパレルやバッグなどを扱う西館5階には、「東横デパートメモリアルメッセージ」と題し、客から寄せられたメッセージが壁面を彩った。両親と来店した横浜市の女性(24)は、「周辺に新しい商業施設ができたが、(東横店の)どこかほっこりした感じがよかった」と話した。
閉店時間になると、入り口付近に詰めかけた客を前に、石原一也東急東横店長が手短に閉店のあいさつを行った。その後、入り口に「渋谷に、感謝。」と大きく書かれた幕が下ろされ、同店の85年の歴史にピリオドが打たれた。
100年に一度と言われる再開発で、渋谷には商業施設が次々と誕生し、街は様変わりしている。渋谷スクランブルスクエア(19年11月開業)には、東急百貨店が東横店の顧客の取り込みを意識した自主編集フロアを設けた。そのほかにも渋谷パルコ(19年11月開業)、東急プラザ渋谷(19年12月開業)に加え、今年6月には宮下公園の再開発で「ミヤシタパーク」が開業する。東急東横店の両館が取り壊された跡地にも、渋谷スクランブルスクエア2期棟(27年に開業予定)が建つ予定だ。