※この記事は2020年2月6日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
新型ウイルスで落ち着かない心の内
新型コロナウイルスの影響、予断を許さない状況が続いています。下にリンクを貼った記事に登場する、香港のセレクトショップ、ジョイス(JOYCE)のマイケルは仲の良い友人。「本土に比べれば香港は全然マシだと思うけど、それでもみ~んなマスク姿。ビジネスは、、、ヒドい」とメッセンジャーを送ってくれました。日本の百貨店も2月に入って以降、売り上げが急落していると聞きます。インバウンドのみならず、ローカルの購買意欲も押し下げているのでしょう。先月の月次売り上げに関する百貨店各社の記者会見、ものすごくネガティブに捉えられかねない編集をされた上に、バンバン流れていましたね。情報を伝える側の人間として、正直、イロイロ思うことがありました。
イベントの中止、イベントへの参加中止も相次いでいます。時計の世界ではスウォッチグループが3月上旬、「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」の代わりに開催予定だった、グループ上位6ブランドの新作発表会(@チューリヒ)を中止。延期ではなく、中止です。このタイミングでなければ、特にバイヤーからの受注面においては無意味ですからね。昨年もバーゼルワールドに参加しなかった同グループは、メディアへの露出が大幅に減少したと言われています。それゆえ、今回のイベントに懸ける思いは強かったろうと想像すると、やるせない思いを抱かずにはいられません。
間も無く始まるニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリのファッション・ウイークでは、おそらくアジア人は、少なからずイヤな思いもすることでしょう。公共交通機関に乗れば、イヤな顔をされたり、洋服などで顔の一部を覆う姿を目撃したり。レストランでは、入店拒否もあるかもしれない。正直、そのくらいは覚悟して、週末からの出張に臨むつもりです。
ニュースを見ながら、そんなことを漠然と考えていると、毎回「これで、世の中は一気に変わるなぁ」という結論(というほど確固たる考えではありませんが)にたどり着きます。人間は“自分ごと化”すると、モノすごいパワーで変わります。そして少なくともアジアとアジア人において、今回の騒動は、対岸の火事ではなく、身内の不幸。売り上げの急落や既存のシステムの機能不全まで目の当たりにして、社会を、時代を変える必要性を痛感していると思うのです。今回の一件は、喉元を過ぎれば忘れるハナシではないような気がします。社会が、その一部を成すファッションやビューティの業界が、大きく変わる気がするのです。
今、自分にできることは、正直限られています。影響は、まだまだ大きくなるのかもしれません。今はなるべく平常心で、心豊かに、時代の、社会の、業界の変化を見つめたい。そして、こんな時だからこそ春夏の洋服、心安らぐビューティ製品を買って、私たちが提供しているモノの力を改めて体感したい。そんな風に思っています。
今回は、あんまり落ち着いていない心の内が露呈した、いつも以上にとりとめのないお手紙となりました。ご容赦ください。
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