※この記事は2019年10月25日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
インスタも全然違うLVの2トップ
環境は、人を物語る。
誰の名言でもなく、今とっさに思いついたカッコいい風の言葉ですが(苦笑)、我ながら的を得ていると思います。
実は度々、お会いする方々にはそんなお話をして参りました。共にエディ・スリマン(Hedi Slimane)門下生で、大雑把に括れば“ほぼ同世代”。で、片方は「ディオール オム(DIOR HOMME)」(当時)、もう片方は「ランバン(LANVIN)」のメンズを率いてきたクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)とルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)の話です。
この2人、出自や世代は似通っているのですが、今からおよそ5、6年前は、働く環境が真逆すぎて、そして、それがクリエイションに直結していて面白いな、と思っていました。
クリスは、当時手掛けていた自身のブランド「クリス ヴァン アッシュ(KRIS VAN ASSCHE)」のオフィスに驚いた記憶があります。それは、例えればまるでアリの巣。長い通路の左右には営業や生産、デザインチームの小部屋があって、だだっ広いクリスのアトリエはその最深部。そこには中央に机と椅子がポツン。そのはるか奥にムードボードという、緊張感さえ漂うミニマルな空間でした。「ディオール オム」も手掛ける彼は、ハイヤー移動が多かったハズです。結果、クリエイションは、ルールを重んじるユニフォームに傾倒。シャープでストイックなフォーマルを見るたび、オフィスを回想したものです。
一方のルカは、デザインチームと同じ部屋でワイワイしながらコレクションを手掛けているようでした。チームの一員に見せてもらった写真によると、ルカのデスクは、“係長”のポジション(笑)。自転車通勤の彼は、街中の一般人に刺激を得ていたように思います。結果のクリエイションは、テイストミックスとハイブリッドでした。
そんな発見をしてしまったせいか、今も本人を取り巻く“何か”から、彼らの個性を見出そうとしてしまいます。今一番参考になる“何か”は、インスタグラム。直近の主たる研究対象は、「ルイ・ヴィトン(LUIS VUITTON)」のニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と、ヴァージル ・アブロー(Virgil Abloh)です。共に同じメゾンで働きながら、2人のアカウントは大きく異なっています。
ニコラのアカウントは、“Look at 俺”なカンジです。ポートレート多め(笑)。作り込んだシューティングも多めです。ゆえに今回は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)と握手を交わしたメゾンに対して、勇気を持って、単刀直入に嫌悪感を表明しています。時代がどう変わろうと基調は未来的なミニ丈、信じるものを追い続ける彼のクリエイションに通じるなぁと思います。
一方のヴァージルは、“Let me introduce 俺の周り to you”、って感じでしょうか?ポートレートはほぼ無し。スマホの写真が多めです。ニコラとは対照的にストレートなメッセージを投げかけることは、実は決して多くありません。多種多様な手法で、重きを置く「ダイバーシティー(多様性)」の価値観を忍ばせる彼らしい投稿が目立ちます。
投稿のみならず、本人のプロフィール(肩書きを明記するニコラに対して、ヴァージルはメゾンの名前さえ入れません)、フォロー数とフォロワー数及びその比率、まだパソコンからは確認できる投稿に対するエンゲージメントなど、探検するとキリがないのですが、どこまでも対照的に見えて面白いのです。そして最後には「この2人を2トップにするメゾンって、スゴイな」と思っちゃう(笑)。 正直僕はあえて選択するならヴァージル派で、インスタの世界ではそんな人が多いようですが、リアルの世界、特にパリのクリエイティブの世界では、異なる見方があるのでしょう。そんなことを考えながら投稿を1つ1つ見ていくと、学ぶことが非常に多いんです。
一度、インフルエンサー・マーケティングに挑む方々は、腰を据えて数時間、インスタと真剣に向き合ってみてはいかがでしょうか?愚痴や悪口、マウンティングなどの悪癖を身につけないためには、事前に最低限の知識だけインプットした後は、1人で、じっくり向き合うことをオススメします。
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