新型コロナウイルスで一番苦しんでいるのが、イタリアだ。1カ月前に「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」が無観客ショーを行ったときとは比べものにならない。全土には移動制限や外出禁止、非必需品の製造中止などの強硬策が続々発動され、企業活動や市民活動は一変している。サラ・フェレロ/ヴァレクストラ最高経営責任者に現状と、展望を聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)
新型コロナウイルスは、世界中の人々の精神とライフスタイルに広範な影響を及ぼしています。「ヴァレクストラ」の場合、まずは中国で1月、全7店舗の営業は続けたもののトラフィックがなく、応じて売り上げが低下しました。第1波です。家主から家賃免除をしていただいたとしても、人員や財政支援同様限界がありました。そして、第2波がヨーロッパを襲いました。中国へのフライトキャンセルに始まり、2月の第1週以降は中国およびアジアからの観光客が減少しました。ミラノ・ファッション・ウイークの終了と同時にイタリアでもウイルス感染が拡大し、3月には店舗が続々と閉店。一部の市民は組織から強制休暇や自宅待機を強いられています。「ヴァレクストラ」の場合、全ての生産工程が停止し、製品を完成させることができません。本社はミラノ、工場は本社から40分ほど離れたベルガモの近くで、イタリアを襲った人的悲劇のまさに震源地です。
私たちは困難に立ち向かい、いずれは成功するでしょう。でもそのプロセスは、長くて苦痛なもの。特に小売業の場合、店舗閉鎖は収入がゼロになり、それが続くことを意味します。株が市場で取引されているか、十分に資本のある企業でないかぎり、残された時間は長くありません。生き残るには進歩的で思い切った行動を起こすことが必要です。
人材においても、大きなリスクを抱えています。会社とは、人々が働くことで成り立つのです!特に小さな企業は、組織が大きな犠牲を払う必要があります。さもないと新型コロナウイルスの感染拡大が収束するころ、従業員は「十分に保護されていない」と感じて大企業に移ってしまうかもしれません。困難な時期だからこそ、彼らをより良い方法でケアすることが大切です。
主に職人が多い小規模のサプライヤーは、3〜6カ月生産が滞り、支払いまでなくなると、極めて危険な状況にさらされます。そうなるとイタリアは、唯一無二であり、ユニークで特別なメード・イン・イタリーの本質を失います。「ヴァレクストラ」チームは、困難を乗り切るため懸命に戦っています。
懸念もしていますが、私たちは楽観主義者でもあります。製品は時代を超越しているので、影響は、ファッションブランドより少ないでしょう。本社スタッフは在宅勤務。店頭でのコミュニケーションによる販売とブランド訴求ができないので、別の方法でリーチする方法を楽観的な視点で考えています。ほかの企業の友人や同僚と、新たな取り組みを共有しています。
だから現状が終わるころ、私たちは新しい独創性と革新性、そして現場に復帰する大きなエネルギーを備えていることでしょう。
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