新型コロナウイルスで一番苦しんでいるのが、イタリアだ。1カ月前に「ジョルジオ アルマーニ」が無観客ショーを行ったときとは比べものにならない。全土には移動制限や外出禁止、非必需品の製造中止などの強硬策が続々発動され、企業活動や市民活動は一変している。リカルド・シュット(Riccardo Sciutto)/「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」最高経営責任者に現状と、展望を聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)
イタリアのサンマウロパスコリに構える自社工場での生産は、イタリア政府の指示と制限に準じ全面的に閉鎖した。まず優先すべきは、私たちの従業員と職人の安全だ。さらには自宅でのテレワークを実施している。ビジネスにおいては大変な時期だが、立ちはだかる危機を前に新たな機会を考えたい。
中国では、嵐の後のポジティブな兆候の一端が見えてきた。例えばECは、顧客の要望をかなえる重要なツールであることが証明された。ウェブサイトを筆頭に、ビジネスをサポートするいくつかのプロジェクトに取り組んでおり、ポジティブなチャレンジやチャンスに集中している。再始動以降の日本の店舗は今なお順調で、商品も発送できている。日本のように比較的安全な状況下の国では、オフィススタッフは場所や時間に縛られないスマートワーク、具体的にはテレワークと時差出勤を実施している。ストアは、短縮営業を続けている。ローカルマーケットの急変に迅速に対応できる柔軟な戦略が重要だ。
日本を含む世界中の従業員の安全を守るため、一部イベントは延期・中止した。ビジネスに影響を与える可能性は否定できない。しかし私たちは、いつか日常に戻り、再びショッピングが始まると確信している。困難な時、人々は確実性を求めるだろう。だからこそリブランディングによりアイコンとして確立したベストセラーの“sr1”は、これまで以上に強くなると信じている。
私たちは、戦後最悪の状況の一つに直面している。全員でそれぞれの習慣を再考し、敬意と責任、勇気をもって行動しなければならない。「発明、偉大な発見、戦略は、困難の中から生まれる」。アインシュタイン(Einstein)の視点を、常に自分に取り入れてきた。私たちは機会を創出し、自分を強く持ち、明日を革新とともに見つめ、成功戦略を生み出すことができると確信している。ブランドとして私たちは、美しい国イタリアの再生の一部でありたい。ブランドが属する街ミラノから始め、常に未来を前向きに見据えて行動したい。
終息の兆しが見えたら、私たちが愛する日常生活に出合い、受け入れ、そこに戻ることがどれほど素晴らしいかを一緒にイメージしてほしい。私は、これが私たち全員にとって最初の願望になると思う。そして、旅をすること。もちろん日本へも!その願望のためにも、私たちは、「靴は世界を変えられる」と確信している。
強制的な街の閉鎖が終わる時、愛する人たちや友人と外出できる最初の日に足を入れる靴は、より軽やかに、より夢のような次元に私たちを導くだろう。
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