※この記事は2019年11月5日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
アラカルトより定食なのか?
パーソナライズやカスタマイズで個性を表現する世の中ですが、この手の企画・イベントで結果(数字)を積み上げるには、ショップスタッフの接客や販売スキルが欠かせないと聞きます。カラーを中心とするメイクブランドの美容部員も同じでしょう。
最初にそんな話を聞いたのは、再起を願ってやまない「パンドラ(PANDORA)」でした。ご存知、選び放題のチャームを組み合わせると世界に1つのブレスレットが完成するワケですが、定番からシーズナルまで商材がバリエーション豊かだと「え、選べない……、帰ります」と、数時間接客したにも関わらずなんにも買わずに帰ってしまうお客さまがいるらしく、「最後に背中を押してあげられる、時には主張できるスタッフの方が、売り上げは良いんです」と聞いて、「なるほど~」と思った記憶があります。
先週お邪魔した時計ブランド「ノット(KNOT)」のショップでも、全く同じ話を伺いました。時計の文字盤から針、ケース、りゅうず、ベルトまで、さまざまな選択肢を用意しているブランドですが、フルオプションをご案内するのは、ごくごく一部のマニアだけ。たいていは、時計本体、バックルの色、ベルト、ケースバックの刻印くらいまでに選択肢を限定しないと「2時間悩んだ挙句、帰られてしまう(笑)」ケースがあるそうです。「日本人は、定食が好きですから」という話が忘れられません。
なるほど。確かに「定食」は朝から晩まで、日本人の生活に根付いています。ごはん処に入って、「生姜焼き定食」「ハンバーグ定食」「サバのみそ煮定食」「豚汁定食」などがズラ~っと並んでいるメニューを見るとテンションが上がりますが、よくよく考えると選んでいるのは主菜だけ、もしくは主菜と副菜の一部です。でも文句なんてありません。大満足です。比して海外は、「アラカルト」文化でしょうか?スープからオードブル、メイン、そしてデザートまでフルオプションという場合も多いですよね。
となると、パーソナライズやカスタマイズも、フルフルじゃなくて良いのかも。「パンドラ」は選択肢の幅が広すぎて失速し、「ノット」は制限を設けつつ満足感を損ねないのでジワジワ伸び続けているのかも?とも思います。商材と組み合わせて、店舗のスペース、什器、それに接客。さまざまを考えて、定食にするか、アラカルトにするかを考えるべきなのでしょう。無論、今の時代、それをデータ化・蓄積できたら、尚良しです。
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