※この記事は2019年11月8日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
あらゆる面でLVMH VS ケリング
先日配信したEditors’ Letterで触れた通り、フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者による穀物取引所(フランス・パリ)の美術館への大改装は、安藤忠雄の設計です。そしてそこから数分歩くと、別の日本人建築家、妹島和世の設計による新ランドマークタワーも来年のオープンに向け改修工事を進めています。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が所有する、パリの老舗百貨店サマリテーヌ(LE SAMARITAINE)です。免税店のDFSに生まれ変わる建物は、波打つガラスのファサードが印象的。奇しくもLVMHとケリングというライバル同士が、来年のオープンに向けて、日本人建築家を起用して、既存の建物を改修中なのです。コレは、数奇な運命?し烈な競争?どちらでしょうか?
思えば最近、この2大ライバルは、あらゆる面で競い合っている印象です。例えば今一番ホットな話題は、LVMHによるティファニー(TIFFANY & CO.)の買収交渉。既存メディアがコレを報じている間、私が勝手にライバル視している「日本経済新聞」は、ケリングが「パテック フィリップ」の買収を検討中と報道しました。「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」が独立系ファミリーブランドの座を降りるなんて考えにくいのですが、それでもこんな報道が出てくるのは、LVMHとケリングが両巨頭として注目されている証拠でしょう。
サステナビリティにおいても、両社はし烈な競争を繰り広げ、結果、業界をけん引しようとしています。ケリングが仏政府と結びつけば、LVMHはそのケリングからステラ・マッカートニー(STELLA McCARTNEY)を“引き抜き”ました。
そもそも、傘下ブランドのポートフォリオ作りも似ています。それぞれの最大ブランド「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「グッチ(GUCCI)」をセンターに配置し、モード(LVMHなら「セリーヌ(CELINE)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」、ケリングなら「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」かな?)、ストリート(LVMHなら「ケンゾー(KENZO)」、ケリングなら「バレンシアガ(BALENCIAGA)」)、若手刷新のクラフツマンシップ(LVMHなら「ロエベ(LOEWE)」、ケリングなら「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」)など、周囲に個性あるキャラクターを散りばめ、360度対応の全包囲網を構築しようとする姿には、似通ったものがあります。あ、ノートルダム大聖堂の火災に際しては、寄付金という形での支援発表のタイミングはもちろん、金額も競い合っていましたね(笑)。ケリングは支援表明の早さで、LVMHは支援額で相手に勝りました。一勝一敗です(笑)。
あらゆる面で切磋琢磨するカンジは、結果、それが業界の活性化や社会化に繋がっているから大歓迎なのはもちろん、たとえばLVMHで何かあったら「じゃあ、ケリングはどうするの?」という好奇心を喚起し、実際ケリングが何かアクションを起こしたら「そう来たか〜」と、ファッションニュースの楽しみ方を倍増させてくれるので、最近、なんだか嬉しく思ってしまうほどです。
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