アディダス(ADDIDAS)はドイツが新型コロナウイルス危機に対応するための経済対策として制定した救済措置を利用して、4月分の賃料の支払いを延期しようとしたことが広く非難されている件について謝罪文を発表した。
ドイツでは救済措置の一つとして、家賃滞納を理由とした解約を家主に対して禁止しており、これを大企業のアディダスが利用したことで批判を浴びることとなった。同社は2019年12月期に10億9100万ユーロ(約1276億4700万円)の純利益を出している。ドイツの法務大臣をはじめとする政治家らからも、新型コロナウイルスの影響があったとしても同社には賃料を支払う能力が十分あるはずだと非難されている。
アディダスは「これを読んでいる皆さまへ」と題した公開書簡で謝罪した。同書簡には、4月の賃料は支払ったことや、「われわれは過ちを犯し、またそれによって多くの信頼も失った。信頼回復には時間がかかるかもしれないが、信頼回復に向けてあらゆる努力をする」と書かれている。同時に、新型コロナウイルスによるビジネスへの影響は現時点で計り知れず、将来的には救済措置に頼る可能性もあるとしている。
また同書簡の中で同社は、世界保健機構(WHO)のCOVID-19連帯対応基金(Solidarity Response Fund)への援助を約束し、中国のへ医療品の援助や、製造パートナーに医療スタッフ用のマスク製造を委託したことを発表した。加えて、キャスパー・ローステッド(Casper Rorsted)最高経営責任者を含む役員らの給与カットや自社株の買い戻しの中止などを明らかにしている。
同社は、政府が実施する短時間労働給付金の制度を採用することに労働者側の代表者と合意した。同制度は従業員の解雇を回避することが目的だ。雇用者は従業員の労働時間を短縮し、労働時間減少による給与減少分の一部を政府が補塡する。企業が給与の40%を負担し、連邦雇用庁が賃金喪失分の60%を手当する。結果として従業員はフルタイムで働かなくても通常支払われる給与の4分の3程度の金額を受給することができる。
3月には約50万人のドイツの労働者がこの制度を申請し、4月には215万人が申請するとみられている。大企業の中ではアディダスのほかに、ルフトハンザ(LUFTHANSA)やフォルクスワーゲン(VOLKSWAGEN)も同制度を活用している。