※この記事は2019年11月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
真面目ゆえの害悪、結果としての縄張り争い
縄張り争い。元来害悪のように評される言葉が、「いよいよヤバいな」と思うようになってきました。例えばメディア。弊社も含め、紙媒体とデジタル媒体の連動であり差別化が思うように進まないのは、それぞれが個々に予算を持つ別事業だから。私たちの事業が2つになってもクライアントは倍増しません。ゆえに「デジタルが上がれば、紙はいくらか下がる」「紙が盛り返せば、デジタルは停滞する」のは当然なのですが、会社はそれを許してくれません(「許して!!」とは思うのですがねw)。結果、元来生真面目なわれわれは、自ら責任を持つ媒体に一生懸命になるがあまり、全体としての成長という視点を失いがち。部門間に微妙なムードが漂うことも少なくありません(かなり減ってきましたがw)。以上、かなり、ぶっちゃけましたが、生真面目なスタッフとセクショナリズムが重なると、結果は一番「悲惨」になってしまうことだけは、お伝えしたく思います。︎
リアル店舗とECとか、同一フロアで展開するハンドバッグと化粧品なども同様でしょう。それぞれの担当者は一律に「会社を盛り上げたい」とか「お客さまに商品を届けたい」 と一生懸命ですが、これまた個々に予算が計上されていると、片方の頑張りは片方の数字を奪うものと認識されがち。そして狭間で苦しむ人が頻出します。これまでも、今年も、そんなセクショナリズムや縄張り争いに敗れ、忸怩たる思いをしている人を目の当たりにしてきました。
ただ、そんな縄張り争いに対して、一つの答えになり得る事例も少しずつ生まれています。個人的に注目するのは、アメリカの百貨店ノードストロム(NORDSTROM)と、日本の百貨店の大丸松坂屋です。
ノードストロムは「これからのお客さまは、基本ECだよ」と割り切り、リアル店舗は「じゃあ、ECでできないことって何?」と考えながらニューヨークの新旗艦店をオープンしました。ECの問題といえば、「試着したい」「味気ない」「不在がちで受け取れない」ですよね?ゆえにリアル店舗は友だちとお酒を飲みながら靴が選べるし、ECでオーダーした商品の受け取りはもちろん返品も可能です。こうなるとリアル店舗担当者とEC担当者は、ステキなチームになれそうですね。
大丸松坂屋は、社内をあげて「婦人服の穴をどう埋めるか?」を模索しています。婦人服の部隊は、削減される面積の中で最大限を尽くしつつ、空けた売り場を潔く、本当に潔く次の舞台に引き継ぎ、応援します。取引先に対しても「会社一丸なんです」とのメッセージを発し、結果、取り引きが減ってしまう婦人服ブランドの理解に繋げています。正々堂々です。
ノードストロムも大丸松坂屋百貨店も、多分、予算はそれぞれに課せられていることでしょう。でも、その達成に向けて日々努力しながらも会社の向かう先、ひいては大志を忘れていない。これが、生真面目ゆえの縄張り争いに苦しむ他社との違いではないか?私の目には、そう映っています。
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