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世界で愛されるベーシスト、サンダーキャットにロングインタビュー アーティスト、オタク、黒人としての価値観と人生観

 “超絶技巧”と評される類いまれなる演奏力と、その愛くるしいキャラクターから新旧隔てずにファンを持つベーシスト、サンダーキャット(Thundercat)ことステファン・ブルーナー(Stephen Bruner)。音楽一家に生まれた彼は、ベースを手にすると早々とその才能を開花させ、10代で人気バンドに加入しながら大物アーティストの後ろでベースを弾くなど、世界中を飛び回る売れっ子ベーシストになった。その後ソロに転身し、2017年に発表した3rdアルバム「Drunk」では持ち前の圧倒的なスキルに加え、妙にクセになるリリシストとボーカリストとしての顔を見せ、さらにはケニー・ロギンス(Kenny Loggins)やファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)ら豪華ゲストアーティストが参加し、衝撃的なアートワークとも相まって彼の名を世界に知らしめる出世作となった。

 そんなステファンが、4月3日に最新作となる4thアルバム「It Is What It Is」を発表するにあたり、この1月に来日した。彼が“サンダーキャット”になった理由やアルバムについてなどの音楽的な話はもちろん、胸に光る無数のネックレスをはじめとする黒人とジュエリーの関係などの話も聞いたのだが、どんな話題よりも目をキラキラとさせて雄弁に語ったのが、日本のアニメやマンガについてだ。彼のパーソナルな一面がうかがえるロングインタビューをお届けする。

「自分から“サンダーキャット”って名乗ったわけじゃないよ(笑)」

WWD:まずは、アーティストとして活動することになった理由から教えてください。

サンダーキャット:13〜14歳にはプロのミュージシャンとして活動していたから、10代の頃から何らかの形でアーティストだったとは思う。でもはっきり1人のアーティストとして活動しようと思ったのは、フライング・ロータス(Flying Lotus、音楽プロデューサー)の一言がきっかけかな。彼がアルバム「Cosmogramma」(2010年)で俺をフィーチャーしてくれて、「お前は1人のアーティストとして活動をするべきだ」と助言してくれたんだ。

WWD:それまでは、バンドに所属したりバックミュージシャンとして活動していましたね。

サンダーキャット:いろいろ活動、っていってもエリカ・バドゥ(Erykah Badu、ネオ・ソウル歌手)のツアーと、スイサイダル・テンデンシーズ (Suicidal Tendencies、ハードコアバンド)がメインだけど、最後のほうでソロ活動も始めたんだ。当然、スケジュールがバッティングすることが増えてね、ソロ活動を選ぶことにした。このことで1つすごく記憶に残っていることがあって、セルビアであったフェスで誰がブッキングしたか知らないけど、エリカ・バドゥとスイサイダル・テンデンシーズの両方が出演していて、しかも連続して出演するタイムスケジュールだったことがあるんだ(笑)。俺は連続して演奏することになったわけだけど、誰もパニックにならなかったし怒らなかった。これをきっかけにソロ活動に専念することを決めたんだ。

WWD:では、直訳すると“雷猫”のアーティスト名の由来は?

サンダーキャット:子どものころにアメリカのTVアニメ「サンダーキャッツ(ThunderCats)」が大好きで、自分で洋服を買うようになってからは「サンダーキャッツ」のTシャツばかり着ていたんだ。ちなみに制作していたのは日本のアニメーション会社ね。それで、俺の名前を知らない誰かが俺について話すとき、「あの『サンダーキャッツ』のTシャツを着たやつ」みたいに呼んでいたのさ。それから俺の友達が“サンダーキャット”って呼ぶようになったんだ。決して自分で名乗り始めたわけじゃないよ(笑)。

でも、エリカ・バドゥら大物たちと仕事をするまでは、全然定着しなかったんだ。影響力のある人たちが「やあ、“サンダーキャット”」って話しかけてくれたから広まったね。だからフライング・ロータスも「Cosmogramma」では、俺の本名じゃなくて“サンダーキャット”でクレジット表記してくれているよ。

WWD:そもそも、なぜベーシストとしての道を選んだのですか?

サンダーキャット:音楽一家で父親と兄がドラマーだから同じことをしたくなかったし、なぜか弦楽器に惹かれてね。それに気付いた父親がベースを買ってくれたのさ。実はあまり話したことがないんだけど、ベースを弾けるようになる前からよく絵を描いていて、美術系の学校に進学してアニメーターになることを考えていた。今でもよく描くし、音楽と同じくらい大好きなんだけど、父親が「音楽を選んだほうがいい」って言うからベーシストになったね。

WWD:あなたにとっての音楽面でのヒーローは?

サンダーキャット:たくさんいるけど、昔からずっと好きで敬愛しているのはジャコ・パストリアス (Jaco Pastorius、ベーシスト)、スタンリー・クラーク(Stanley Clarke、ベーシスト)、ジョン・マクラフリン(John McLaughlin、ギタリスト)、フランク・ザッパ(Frank Zappa、音楽家)、神保彰(ドラマー)、坂本龍一……本当に数えきれないからこれくらいにしておくよ。

通常のベースより音域が広い6弦ベースを使用している

WWD:ベースプレイの幅が広いのが特徴であり魅力だと思うのですが、フレーズはどう思いつくんですか?

サンダーキャット:ありがとう!5歳から30年ぐらいベースを弾いているけど、いつも練習を通じて思いつくかな。あえて障害物を作るというか、何かを違うふうにやってみるとか、自分自身にチャレンジすることで出来上がっていくことが多いね。

WWD:来日中でも練習を?

サンダーキャット:いや、日本にいるときはなるべく休むようにしているんだ。でもほかの国を訪れているときは曲を書いていることが多いね。ツアー中だと毎日演奏しているからそれが練習にもなっていて、ツアーをしていない時期は、ちゃんと練習の時間を取っているよ。

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