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米ITサービス企業、新型コロナで悲鳴を上げる小売業界を支援

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、各国の小売店が営業停止や自粛に追い込まれている。この状況を受けて、オンラインサービスを提供するIT企業がオンライン上の売り場を提供することで、各ブランドやその仕入れ業者を支援する新たな動きが広まっている。

 フェイスブック(FACEBOOK)、イーベイ(eBAY)、アマゾン(AMAZON)、ビューティアプリ運営を手掛けるパーフェクト(PERFECT)などは、困難な状況に陥っている小売業者にとって頼みの綱とも言える新たな支援策を続々と打ち出している。

 フェイスブックは1億ドル(約108億円)の現金補助と、中小事業者向けの表示地域制限付きの広告クレジットの提供を明らかにした。同社はこれにより30カ国以上で3万の小規模事業者の支援が可能になるとしている。

 また同社は、小規模事業者が無料でオンライン上での販売に参入し、同じく無料でオンライントレーニングを受けられるサポート態勢も考案した。シェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)=フェイスブック最高執行責任者は、「事業者がオンライン上にこぞって進出している。フェイスブックを利用すれば無料でインターネット上にページを開設することができる」とのコメントを発表した。

 ECサイトへの進出にはイーベイも活用されている。イーベイは、実店舗で営業している事業者のウェブ参入のサポートを目的とした新プログラム、「アップ・アンド・ランニング(Up & Running)」のサービス提供を始めた。このプログラムでは、条件を満たす事業者がイーベイに無料のベーシックストアを3カ月間オープンすることができる。また、販売手数料の支払い延期や、商品を500点まで無料出品することも可能だ。新規利用者はマーケティングツールやブランディング強化機能、配送手数料の割引なども受けることができる。

 ECサイトにとって、小売業者はその規模の大小にかかわらず重要な存在だ。イーベイは北米の小規模小売店への1億ドルの援助を表明している。イーベイのジョーダン・スウィートナム(Jordan Sweetnam)北米担当副社長は、「実店舗を持つ小売業者は新型コロナウイルスの影響でかつてないほどに打撃を受けている。イーベイはこれまでにも多数の小規模事業者の発足や成長をサポートしてきた。実店舗で事業を行う企業の存続に向けて、できる限りのことをしていきたい」とコメントした。

 大規模小売店や百貨店であれば、このような危機的状況に陥っても数カ月間は持ちこたえることができる。しかし、小規模の小売店であれば数週間、または数日で限界を迎える。米金融大手JPモルガン・チェース(J.P. MORGAN CHASE)は2016年、小規模事業者の蓄えとして保有する資金は27日分であるという経済データを発表している。つまり、この状況下では多くの小規模小売業者がそう長くは持たないということだ。

 新型コロナに対する安全策と配送ポリシーの変更を求めるストライキが決行されたアマゾンでは、レジ決済なしで買い物ができる「アマゾン ゴー(AMAZON GO)」で活用されているシステムの提供を開始した。しかし、同システムの導入についての詳細は明らかにされていない。

 パーフェクトは、同社が提供するアプリ「ユーカム(YouCam)」を通じてビューティブランド向けに3つの無料デジタルサービスを提供する。同社は7月31日まで在庫管理を100点まで無料化し、「ユーカム」の無料利用サービスも提供する。これにより、各ブランドが同社のAR(オーグメンテッド・リアリティー以下、AR)機能を自社サイトと統合することができ、消費者がオンライン上でメイクを試すことが可能となる。「ユーカム アート(YouCam ART)」または「ARライブトレーニング(AR Live Training)」のライセンスも無料提供し、AR技術を用いた社内でのリモートトレーニングやチームの連帯強化に役立ててもらう狙いだ。

 アリス・チャン(Alice Chang)パーフェクト創始者兼最高経営責任者(CEO)は、「新型ウイルスのパンデミックにより、実生活での規制が強化されている。今はデジタルでのつながりがライフラインになっている。ビューティ技術を提供する企業として、当社のサービスが美容業界とその顧客へのサポートになればいい。無料のARデジタル・メイクアップ・サービスという新しい経験が、困難な状況の手助けになることを願っている」とコメントしている。

 また、中国第2位のEC企業JDドットコム(JD.COM)とブランド小売代理店のユニコーン(UNICORN)が共同で、カナダのブランド「ポーツ(PORTS)」とそのハウスブランドの2020年春夏コレクションショーのライブ映像を9時間にわたって配信したところ、売上高が140万ドル(約1億5100万円)に達した。約130万人がこのライブ配信型ファッションショーを視聴し、同ブランドはJDドットコム上の店舗で58万人の新規フォロワーを獲得した。今後、JDドットコムが同じ形式で各ブランドをサポートしていくかどうかは未定だが、このシステムが有効であることは明らかだ。

 将来的に見ても、スマートフォンビジネスやSNSを通じたショッピングが秘める可能性は無限だ。IT企業はブランドや小売業者とともに成長してきたこともあって、実店舗の生き残りをかけた緊急支援を行っており、今後もさらに拡大されていくだろう。

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