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スマホの次の時代は“音声”だ 声のブログ「ボイシー」が目指す未来

 「ボイシー(Voicy)」は、2016年9月にスタートした音声メディアだ。同メディアでは、独自の基準をクリアした“パーソナリティ”がさまざまなテーマのもと、ラジオのように音声でコンテンツを配信している。その情報の有益性や“ながら聞き”できる利便性などから人気を博し、着実にユーザー数が増加。さらには日本経済新聞と提携してコンテンツの共同制作を行ったり、TBSイノベーション・パートナーズや中京テレビ放送、朝日放送グループのABCドリームベンチャーズ、文化放送などから資金調達を行ったりと、既存の大手メディアを巻き込んだ拡大路線を図っている。音声コンテンツは今後、どこに向かっていき、その中で「ボイシー」はどのように成長していくつもりなのか。緒方憲太郎Voicy代表に話を聞いた。

WWD:Voicyを立ち上げる以前は何をしていた?

緒方憲太郎Voicy代表(以下、緒方):もともとは公認会計士として働いていました。個人的にビジネスが大好きで、好奇心旺盛だったということもあり、いろいろな会社の裏側を見たいと思ったんです。その後は一度休職して世界を回る中で、アメリカでNPO組織を作ったり、オーケストラをマネジメントしたりといろいろな経験をしてきました。日本へ帰国してからは、トーマツベンチャーサポートでベンチャー企業の相談役というポジションでいろいろなビジネスを見てきました。

WWD:自分で起業をしようと考えたきっかけは?

緒方:いろいろな企業に関わっていく中で、成長する企業もあれば低迷する企業もありましたが、世の中に新しい価値を生んでいく企業もあって。そういった企業を見て、僕自身も新しい価値を生むことができる素敵なサービスを作って、素敵な組織を作ることに挑戦したいと考えるようになりました。次の時代がどうなるのかを考え、道なき道をいってみたいな、と。

WWD:中でも音声コンテンツに着目したのはなぜ?

緒方:スマートフォンの次の時代は、音声ではないかと考えたからです。スマートフォンの登場で、人と情報の接点は大きく変わり、PCの時代からスマホへと時代が変わった。これと同じように、今後はスマホから音声へと変わっていくと考えています。IoT(モノのインターネット化)が進むことで、あらゆるモノがネットに接続されていきますが、常に手が届く範囲内にあるわけではない。手を使わないで検索したり、デバイスに指示をしたりする必要が出てくるはずで、その方法として音声には大きな可能性がある。僕としても、スマートフォンの次の時代を日本から挑戦できるのであれば、人生を賭けてやる意味があるのではないかと思っています。

WWD:スマートフォンの次の時代を作るために、Voicyはどのようにアプローチをしていくつもりか?

緒方:大きく分けると2つで、音声の機能性と人間性があります。機能性の面だと、これまでは検索するためにデバイスに触れなければならなかった環境とは異なり、音声は“ながら聞き”に代表されるように、生活を止めることなくネットに接続し、情報を得ることができるということ。人間性の面は個人が活躍する現代において、改めて重視されている魅力や人間らしさは、声で表現できるということです。この2つを事業の柱にすることで、音声を軸としたインフラから社会文化まで作ることができると考えています。

コンテンツ軸ではなく人軸でサービスを設計

WWD:ネットラジオのような形態の音声メディアという点では「ポッドキャスト(PODCAST)」などと似ているような印象を受けるが?

緒方:それはよく言われます(笑)。ただ、サービスの軸が違います。「ポッドキャスト」はコンテンツ軸で作っている一方で、僕らは人軸で作っている。配信を聞いて、パーソナリティを好きになったり、理解したりすることを「Voicy」では重視しています。さらにSNS的な要素を入れて、人と人がつながるようにしていることで、コミュニティーの形成を行えるようにもしています。こういったこともあってか、主催イベントはもちろん、ツイッターなどのSNSでも大きな反響や熱量が生まれています。

WWD:パーソナリティには基準があり、誰でもなれるわけではない。その理由は?

緒方:特定のジャンルにパーソナリティが偏り過ぎてしまったり、パーソナリティが多すぎて聞く人がバラけてしまったりすることを避けるためです。また、人が配信を聞くための環境を整えることも大切で。話を聞くときに、「この人の話が面白い」と言われれば聞けますが、単に流れてきた話をちゃんと聞くのは難しい。音声は動画などと違い、すぐに面白いかは分かりづらい。でも、聞けば聞くほどジワジワ好きになってくるという特徴もある。だから僕らが本当にオススメできる、 一緒にサービスを作っていける人たちにパーソナリティになっていただいています。

WWD:パーソナリティになる人の基準は?

緒方:非公開ですが、声の良さではなく、その人の発信内容を見ています。というのも、単に声がうまい人が発信するという世界観だと今までだと変わらないな、と思って。「ボイシー」は音声を届けるというよりも、人の魅力を音声で届けることを重視しているので、基準としては「その人と会いたいか」「その人が飲み会を開いたら何人が来そうか」といった感覚に近いです。なので現状は、比較的インフルエンス力のある人がパーソナリティになるケースが多いとは思います。

WWD:ローンチから3年以上が経っているが、当初と現在でリスナー層に変化はあるか?

緒方:年齢層は20〜30代を中心に、40代も増えてきています。ビジネス好きの男性がメインだった当初に比べ、現在は男女比は6:4です。中には子育てしながら「ボイシー」を聞くお母さんもいます。徐々に生活の一部にし始めるリスナーさんが増えてきている印象ですね。パーソナリティの方も今まではファンが聞く、といったことが多かったのですが「ボイシー」を通じてパーソナリティを知った、というユーザーの方も増えてきました。

WWD:リスナー層の変化に伴い、配信するコンテンツなども変えていくのか?

緒方:当初は音声は読書に近い世界と考え、比較的ビジネス要素の強いコンテンツであったり、勉強になる内容だったりが多かったんですが、今後はめちゃくちゃ面白い番組など、エンタメ性のあるコンテンツを増やしていきたいですね。

WWD:ファッション誌などの中には、音声に注目しているところもある。そういったメディアと共に取り組めることがあるとしたら、どういったことがある?

緒方:個人的には、ファッションって考え方や世界観、ストーリーの部分が重要で、意外と見た目の要素があまり大きくないのかもしれないな、と感じています。そういった意味ではデザイナーがどういう思いで作っているのかといったストーリーは写真とキャプションよりも、音声の方が人々に伝わりやすいのではないかと思います。

WWD:提携や資金調達などを通じて、既存の大手メディアを巻き込んでいるが、その目的は?

緒方:イメージとしては、既存のメディア企業と一緒にテレビ網の音声版を作っている感覚に近いです。テレビ番組を作って広告を取る人もいるし、テレビ通販をする人もいる。僕らも同様に、「ボイシー」でプラットフォームやツールを作り、既存企業はそれらを活用して新しいビジネスを行ってくれればと考えています。今は、そのための先行投資の段階。スマホの次の時代を一緒にやりたいと言ってくれる人たちと、どんどん新しい挑戦をしたいと思っています。

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