目下首都圏において、在宅勤務が可能な職種では、リモートワークが強く推奨されている。私の周囲では、3月初旬から対面の取材や打ち合わせが少しずつ減り、現在はWEB経由のオンライン会議が大多数を占めるようになった。
この生活が始まった頃は、オンライン会議用ツールの設定でアタフタしたけれど、慣れてくると「取材や打ち合わせは、遜色なく行えるのでは?」と感じている。そして「PCやスマホのモニター越しに人と話す」機会が増えるごとに(相手がほぼ女性なこともあって)、心の隅で感じていたことがある。「メイクも普段とは少々発想を変えたほうがいいのかも?」ということだ。
PCのカメラからモニターを経由したやり取りになるため、当然、直接会う時より画像が粗くなる。ソフトフォーカスがかかった感じになるので、ファンデーションはきっちり塗らなくていい(逆に、肌のアラが目立たないから助かる)。その変わり、画像が粗いことで、いつもと同じようなチークとリップでは、「血色感が著しく低下する」印象なのだ。
これは、モニターに映る自分自身はもちろん、相手の表情を見て感じたことでもある。オンライン経由で取材を行う場合など、相手の方もきちんとしたシャツを着用し、恐らくいつもと同じメイクをしているはず。なのに、顔色が少々冴えなかったり、カジュアルな印象に見えたりすることがある。
「きちんと感」を伝えるなら、リップとチークは2割増し
社内会議だったらナチュラルメイクで差し支えないし、このイレギュラーな状態において「メイクなど二の次、とりあえず話しが大事」というのも、その通りだと思う。最近はZOOMやLINEを使った「オンライン自宅飲み」を楽しむ方も増えているそうで、プライベートな場面では、もちろんカジュアル万歳だ。なんなら画像が粗いことを逆手にとって、素顔でリラックスしてもいい。
一方で、取引先と話すなど、仕事の場面である程度の「きちんと感」が求められる場合、ことオンライン経由の会議においては、「チークとリップは2割増しくらいで、ちょうどいいのでは?」というのが、個人的な感想である。
発色が強すぎるチークは「おてもやん」と揶揄されがちだったけど、オンライン会議に限っては「ハーフおてもやん」くらいの血色感が、ちょうどいい着地点だと思う。具体的には、肉眼で見たとき「ホロ酔いの表情」くらい。ポイントは、最初からの濃い目に入れようとしないこと。まずはいつもと同じ量のチークを入れ、もうひと重ねするイメージだ。大人の女性が使うなら「クリームタイプ」「リキッドタイプ」のチークをおすすめしたい。肌との一体感に優れ、内側からじわっとにじむような血色感を演出するアイテムなので、失敗しにくいのが利点だ。
リップはあえて濃く強調する必要はないけれど、赤、オレンジ、ピンクなど、唇に血色感を添えるカラーを選びたい。マットな質感だとコントラストが強調され過ぎることもあるので、ツヤ質感のほうが自然になじむはず。相手の方にも、やわらかな印象に見えると思う。
というわけで、今回はオンライン会議に使えるのはもちろん「大人の女性が、自然に血色感を高める」という視点で、オススメのリップとチークを選んでみた。こんな時代だからこそ気分が上がるような色を、最新の夏コレクションからご紹介したい。
血色感を添え、気分を上げる「大人のリップ&チーク5選」
大人の肌に自然な艶と血色感を添える「アンプリチュード」
滑らかなクリームが、肌の上で瞬時にパウダーに変わる、「アンプリチュード(AMPLITUDE)」のクリームチーク。適度な透け感のあるフレッシュなレッドは、大人の肌をほんのり温め、イキイキとした血色感を演出してくれる。初心者でも失敗しにくい、絶妙の発色と質感が美しい。
肌なじみの良い、エキゾチックなテラコッタ「アディクション」
「アディクション(ADDICTION)」のサマーコレクションは、インド南西部に位置する寺院の秘宝にインスパイアされたカラーがそろう。22のBurnt Clayは、エキゾチックな印象のテラコッタ。みずみずしいテクスチャーで、指先でそっとぼかすと、肌に溶け込むようになじんで、ヘルシーな印象が手に入る。
甘すぎない大人のチェリーピンク「スック」
艶感のある自然な仕上がりが人気の「スック(SUQQU)」シマー リクイド ブラッシュ。この夏仲間に加わるのは、鮮やかなチェリーピンクだ。一見華やかな色だが、なじませるとほんのり血色感を添え、可憐な表情へと導いてくれる。肌に溶け込むようになじみ、甘すぎない「大人の可愛さ」を演出したい。
オニツカタイガーとコラボした、快活なオレンジ「シュウ ウエムラ」
「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」の夏コレクションは、オニツカタイガーとコラボした、スポーティなカラーたち。リップケースにスニーカーのストライプをあしらったサンライズ エナジーは、トレンドのフレッシュなオレンジにグロスのような艶を添えて。快活な印象の口元へと導いてくれる。
高発色×ジェルの艶、見た目もかわいいネコリップ「ポール & ジョー」
キャップを開けた瞬間「可愛い」と思わず声が出そうな「ポール & ジョー ボーテ(PAUL & JOE BEAUTE)」のネコリップ。鮮やかなオレンジのネコをクリアイエローのジェルで包み、実際塗るとほんのり艶のある、果実のようにジューシーな発色。笑顔が似合う明るい印象の口元を演出してくれる。
在宅勤務時、メイクによる心理的な効果とは
フリーランスの私は、これまでに自宅で仕事をする時、化粧をせずほぼ素顔で通していた(外出時にようやくジャージから着替え、メイクするという不精者でした……)。逆に今回のリモートワークで、オンライン会議のために「家の中でメイクする機会」が増えたわけだけれど、これが案外「日常のメリハリ」に役立っている。
メイクをすると、気持ちが引き締まるというか、仕事モードのスイッチが入る感覚がある。そして1日の終わりにメイクをオフすると「はい、今日はここまで。あとは明日がんばろう」と、気持ちを切り替えるきっかけにもなった。
これまで毎日出社されていた方は特に、在宅勤務中「仕事と生活の切れ目」が曖昧になることもあるのでは?また長期に渡って自宅待機を余儀なくされると、時々気分が塞ぐこともあるだろう。そんな時、メイクは女性にとって比較的手軽に気分を変え、オンオフをスイッチする、1つの手段になり得ると思う。一方では、最近オンライン会議用に「肌修正アプリ」も登場しているとか。「家の中にいてまで、きっちりメイクするなんて」という方には、これも素敵な選択肢の1つだ。家では素顔の状態で肌を休め、パックの時間を増やすなどして、この機会にスキンケアにいそしむ方法もある。このあたりは、その方のライフスタイルや嗜好によって違ってくるだろう。
先行きが不透明で、イレギュラーな状態が続く中「自分に合ったツールを使い、自分にとって快適な方法で、なんとか今をやり過ごしていく」1つの手段として。メイクや美容が、気持ちやライフスタイルを支える一助になるなら、ぜひ取り入れて頂けたらと思う。
宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける