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連載 海外ビューティ通信

新型コロナ拡大で外出禁止令のモスクワ 市民生活をリポート 海外ビューティ通信モスクワ編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、シンガポールなど、7都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

 この原稿を執筆している4月6日時点、新型コロナウイルスの影響でモスクワでは数々の規制が導入されている。まず外国人はロシア全土で入国禁止となり、国際線フライトが運航を停止した。感染者や濃厚接触者は感染症病院に収容され、最近入国した人々は全員14日間の自主的隔離となり、買い出しやごみ捨てなど一切の外出が禁止されている。モスクワではスポーツや娯楽イベントが中止となり、ミュージアムやジム、劇場などは閉鎖し、それに続いて学校が休校になり高齢者は自主的隔離となった。3月28日〜4月30日まで全国一斉に食料品店や薬局、公共交通機関など一部を除き企業は営業禁止となり、3月30日からモスクワをはじめ多くの地域で外出禁止となった。最寄りの食料品店や薬局での買い物、自宅から100m以内の範囲でペットの散歩をすることは許可されている。デパートや大型の公園は閉鎖、飲食業はテイクアウトかデリバリー以外すべて休業。飲食業界やイベント業界などからは倒産を懸念する不安の声が上がっている。(この記事はWWDビューティ2020年4月9日号からの抜粋です)

 新型コロナウイルス禍による世界同時株安と並行して、石油生産への依存度の高いロシアはOPEC(石油輸出国機構)との減産合意の不成立が重なり、通貨のルーブルが約20%も急落した。この先国境封鎖が続けばさらなる下落が想定される。ルーブル安はこの先輸入品の価格が値上がりすることを意味する。国内に流通する大手化粧品ブランドは外国メーカーのものばかりで、また、そもそも一般的なロシア人は経済的に余裕がないため何にお金をかけるかを厳選するため、以前から化粧品類は家計において節約対象になりがちだ。そのため2020年のロシア化粧品市場の売り上げは、全体的な縮小が予測される。国民が受ける経済的なダメージは長期にわたり深刻になるだろう。

 新型コロナウイルス対策に話を戻すと、ロシアでもメディアやSNSでは隔離中や外出禁止期間中、できるだけ快適に過ごすためのアイデアが投稿されている。インターネット配信のコンサートや映画鑑賞と並んで飲食のデリバリーもその一つだ。レストランも配達に対応するところが増えており、店内での飲食が禁止となった今ではデリバリーは飲食業界の力の入れどころでもある。

 折しも今はロシア正教会の伝統行事で3月2日から始まった大斎期の最中だ。復活祭までの40日間は肉や乳製品の摂取が禁じられていて、特に信心深い正教徒に限らず、健康的な食生活を心掛ける意識の高い人々はこの時期このルールを守った食事制限を実践する。飲食店側も多くが毎年新作の期間限定メニューを発表するが、栄養バランスを考慮しヘルシーなだけでなく、最近はエキゾチックな食材が使われていたり食材の組み合わせがユニークだったりと、ロシアの伝統的な家庭料理にはない味を楽しめる。特に増えているのがアジア料理と中東料理だ。アジア料理ではエビの代わりに豆腐を入れたトムヤムクン、アボカドとマンゴーの生春巻きなどスタンダードな味の料理から、日本そばと野菜をソースで炒めた焼うどん風そばという創作料理も。中東料理ではひよこ豆をペーストにしたフムスや乾燥挽き割り小麦のブルグルなどがよく見られる。日替わりの菜食メニューを毎日届けるサービスもある。長期の外出禁止はつらいけれど、気を落とさず乗り切りたい。


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佐藤仁美:通訳、翻訳家。2010年からモスクワ在住。ソチ五輪、FIFA W杯やアート・文化事業でのメディアコーディネーターをはじめ、ロシア関連番組制作に多数携わる。NHK「ちきゅうラジオ」などのメディアで現地情報を発信。 ロシア世界遺産踏破に挑戦中

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