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スパイバーが相次ぐ増資、評価額が1000億円超えのユニコーンに

 人工タンパク質素材の開発で知られるスタートアップ企業のスパイバーは4月2日付で、繊維商社の豊島に第三者割当増資を行った。発行価格は1株4500円で11万1111株を発行、調達額は4億9999万円になる。この増資により、発行価格に株式総数をかけて算出するスパイバーの企業評価額は1000億円を突破する。同社は今年に入って豊島だけでなく、米国の穀物メジャー、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archer Daniels Midland以下、ADM)やロシアの著名投資家のミロスラヴァ・デュマ(Miroslava Duma)など国内外の有力な投資家や事業会社からの資金調達を加速している。関山和秀社長は「ズーム(ZOOM)」でのインタビューに答え、「2021年度の商業生産に備え、今は国内外の企業との結びつきを強化している。増資はそうした活動の延長線上にある」と語った。

 スパイバーは2007年9月に慶應義塾大学大学院に在学中の関山社長が菅原潤一取締役とともに創業。商業生産を前に、19年12月までで約300億円の資金を調達している。同社が研究開発している人工タンパク質素材「ブリュードプロテイン(BREWED PROTEIN)」は、石油を使わずに、現在の合成繊維やプラスチックと同等、あるいはそれ以上の性能を持つ成形材料を製造できるもの。地球上に豊富に存在するタンパク質を原料にしていることから、次世代の“脱石油素材”の大本命技術の一つと言われ、世界中で研究開発が進められている。同社はバイオインフォマティクス(生命情報科学)から遺伝子工学、合成生物学、分子生物学、発酵工学、有機化学、高分子化学、材料工学など幅広い分野にまたがる分野の研究者を、本社のある山形県鶴岡市に呼び集めており、この分野の世界的なトップ企業。昨年12月にはスポーツアウトドア大手のゴールドウインと共同開発し、世界で初めて人工タンパク質素材を使った高機能ウエア「ムーンパーカ(MOON PARKA)」の販売(50着限定)にこぎつけている。

 穀物メジャーのADMからは19年12月23日付で約43億円を調達し、タンパク質の原料調達で提携。すでに50億円を投じ、21年の稼働を目指し、タイに原料のタンパク質製造プラントの建設に着工しているが、米国にも原料プラントを製造する考え。

 ミロスラヴァ・デュマはファッションテックの著名なベンチャーキャピタル(VC)であるフューチャーテックラボ(FUTURE TECH LAB以下、FTL)の創業者兼CEOで、FTLはスパイバーのライバルであるボルトスレッズ(BOLT THREADS)や俳優のレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)も出資している人工ダイヤモンド製造企業ダイヤモンド・ファウンドリー(Diamond Foundry)などに出資している。スパイバーにはデュマ個人の出資で、1月31日付で1億899万円を出資した。

 同社には議決権の8.26%を出資する大株主の一つであるゴールドウインを筆頭に、島精機製作所やカジナイロン、官民合同の投資ファンドであるクールジャパン機構なども出資している。なお筆頭株主は17.37%を出資する合成樹脂材料大手のKISCOになる。

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