J.フロント リテイリングの2020年2月期連結業績(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比4.5%増の4806億円、営業利益が同1.5%減の402億円だった。主力の百貨店事業が、消費増税、暖冬、新型コロナウイルスの影響で低迷。増収には19年11月にオープンした渋谷パルコの保留床の売却が寄与した。
百貨店事業は売上収益が同4.2%減の2637億円、営業利益は同27.2%減の176億円だった。総額売上高(5640億円、消化仕入れ分を含む)のうち、4割を占める衣料品は同6.1%減の2565億円。富裕層・訪日客をターゲットに本館を建て替えオープン(19年9月)した大丸心斎橋店は、19年9月~20年2月の免税売上高が前年同期比9.9%増と、一定の成果が出た。
パルコ事業は渋谷パルコ、錦糸町パルコのオープンにより、売上収益は同前期比24.7%増の1122億円。営業利益は、前年の店舗終了に伴う特別損失の反動もあり98.7%増(108億円)となった。
テナント賃料で収益を得る不動産事業の強化も進めた。不動産事業の売上収益は同4.7%増の177億円、営業利益が同44.2%増の67億円。新たに「BINO東洞院」(19年4月、京都)「大丸 ホワイトアベニュー」(11月、心斎橋)「BINO御徒町」(12月)などの商業施設を改装・オープンしたほか、ギンザシックスの堅調も寄与した。
足元では、新型コロナが「かつてないほどの打撃になっている」(山本良一J.フロント リテイリング社長)。J.フロントの21年2月期連結業績予想は、売上収益が前期比14.5%減の4110億円、営業利益が同70.2%減の120億円を見込む。ただし、これには今回の緊急事態宣言による休業の影響は含まれておらず、修正する公算が高い。新型コロナは、21年の上期(3~8月)にも大きな影響があるとみる。
「(21年2月期予想は)全く満足いく水準ではない。今は投資を削減し、現預金の積み上げを図らねばならない」と山本社長。一方で、「この危機が終息に向かえば反転攻勢だ。振り返ったときに2020年は意義深いターニングポイントだったといえるよう、中長期の改革にも集中して取り組む」。