新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、日本を含む世界各国で外出制限や自宅隔離などの措置が取られているが、これによって人々の考え方や消費動向が大きく変化している。
ファッション業界のトレンド分析を専門とする米調査会社ファッション・スヌープス(FASHION SNOOPS)のミシェル・ロットバート(Michelle Rotbart)=カルチャー部門ディレクターは、「今回の危機的な状況に対応するための“新たな暮らし方”が事態の収束後も継続し、新たな常識となっていく可能性がある」と語る。
今後はどのようにすれば、消費者の心をつかめるのか。同社が挙げた3つのポイントを紹介する。
・不安感やストレスへの対処
外出が制限され、自宅にこもらざるを得ない状況の中で孤独感を深める人も多い。また先行きの不透明感によって不安にさいなまれることもあるだろう。こうしたことから、人の温もりが感じられ、安心感を与えてくれる商品やブランドに対して好感を抱く消費者が増加しているという。
カレラ・クルニク(Carrera Kurnik)=同カルチャー部門エディターは、「スキンケアブランドの『キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)』はアンバサダーがメッセージングアプリを使ってフェイシャルケアなどのアドバイスを行い、顧客とのつながりを維持している。インスタグラムでのライブ配信や、ソーシャルメディア上で消費者に参加を呼びかける“○○チャレンジ”などを行うブランドも多いが、いずれも顧客とつながることを目的としている。小さなことでもいいので、消費者の不安や孤独をやわらげるための工夫をすることが重要だ」と説明した。
・デジタルが苦手な顧客へのサポート
現在、仕事のミーティングや学校の授業をはじめ、ワークアウトや仲間内での集まり、場合によっては結婚式までもがオンラインで行われている。その便利さから、事態が鎮静した後もこうした新たな習慣がある程度は残っていくと予想されるが、一方で「コンピューターは苦手」という人が取り残されていることも事実だ。
ロットバート=カルチャー部門ディレクターは、「ブランドはデジタル化を推進すると同時に、そうしたサービスを使ったことがない顧客に対するサポートを提供するといいだろう」と述べた。
・正しい行いをすること
他人に親切にしていたり、善い行いをしていたりする場面をとらえた動画がソーシャルメディア上で拡散され、人気となっているのは偶然ではない。先行きが不透明な中、そうした“人の温かさ”を感じさせるものが以前よりもさらに共感を呼ぶようになっているのだ。
クルニク=カルチャー部門エディターは、「正しい行いをすることの重要性が再認識されている。企業が生産ラインを転用して医療用のマスクや殺菌効果のあるハンドジェルの生産に乗り出すといった大きな支援活動はもちろん、個人が地元のレストランをサポートするためにテイクアウトで利用するなど、誰もが自分にできることを考えて行動している。今後ますます、善行が人々の心に響く時代になっていくだろう」と予想した。