三陽商会は14日、次期社長に副社長の大江伸治氏(72)が5月の株主総会後に就任するトップ人事を発表した。今年1月に就任して間もない中山雅之社長(58)は代表権を持つ副社長に異動する。大江氏は三井物産出身で、ゴールドウインを再建した手腕を買われて3月に入社したばかり。わずか3カ月での異例の人事は、“バーバリーショック”の後遺症で4期連続の営業赤字に沈む中、さらに新型コロナウイルスまでのしかかる「非常時」(中山社長)を乗り越えるための措置だ。
中山社長と大江副社長は同日、東京・丸の内で開かれた同社の2020年2月期決算説明会に登壇した。
中山社長は「今は平常時ではなく非常時。外部から来た大江氏が三陽商会の顔となることで金融機関や外部投資家含めた方々の理解を得られるようにする。私は社員や既存の取引先の関係強化に努める」と話した。同社の株式6%超を保有する米投資会社RMBキャピタルから経営体制の刷新を求められていたが、「提案をいただいてはいるが、今回は当社の中で決めた」と説明する。
大江氏は繊維ファッション部門で半世紀近いキャリアを積んだ。財務やサプライチェーンの経験が豊富で、00年代に業績が低迷していたゴールドウインのV字回復の立役者として知られている。大江氏は「コロナの影響が多大で、再生プランは容易ではない。並大抵の努力ではダメ。引き受けたからには不退転の覚悟でのぞむ」と話した。
トップ交代と同時に取締役を大幅に入れ替える。現在、取締役7人中2人が社外取締役だが、新体制では取締役9人中6人が社外取締役とし、ガバナンスの強化を図る。新しい社外取締役には元東急百貨店社長の二橋千裕氏(66)、元三井物産の椎名幹芳氏(70)らが加わる。三陽商会の創業家出身で元社長の中瀬雅通氏(70)、前社長の岩田功氏(60)は退任する。